「成熟市場における営業力に関する一考察」(杢谷一幸,
1987)
営業力とは日常よく使われる言葉であるが、その内容は、企業のマーケティング活動と対立する概念として漠然と捉えられているに過ぎない。本論文は、そうした営業カの内容を明らかにし、その有効性を解明しようとしたものである。営業力が、商品の特性により異なるという観点から、まず研究対象をチャネルを通して商品を市場に供給している消費財メーカーとした。しかし、メーカーのチャネル対応の目的がコントロール水準を高めることであるとの考え方をとらず、それに係わる営業力を「チャネルとの接点における、メーカーに主体的なチャネルに対する購買動機付け政策」と定義した。また、企業の販売活動全体を、相対的商品価値を高めようとする活動と、友好関係を育成しようとする活動から成ると考え、主たるマーケティング活動が前者に含まれるのに対し、営業力はその両面を合わせ持っているとした。前者においては、環境の不確実性と情報提供による商品価値を高める営業カの有効性との関係が、後者においては、市場シェアと営業力の有効性との関係が検討された。この関係を解明するために、アンケート調査結果を分析する方法が用いられたが、その結果、情報提供の有効性は、サンプル間の環境不確実性にかかわらず有意となった。また、友好関係については、シェアの低い企業で効果に有意差が認められたものの、営業成果に対する説明カは発見されなかった。この結果、メーカーはマーケティング活動の一端を担うべく、商品価値を高めるための行動を更に重視すべきであると言えるが、友好関係は累積するものとも考えられ、営業カの持つ両面の関わりをより深く解明できる枠組みが今後必要とされる。
(以上)