2009.11.20

『検証 ビジネススクール』発刊記念シンポジウム 開催報告


2009年10月28日、慶應義塾大学日吉キャンパス協生館 藤原洋記念ホールにおいて、『検証 ビジネススクール』発刊記念シンポジウムが開催されました。第一部では本書に掲載しているアンケート調査の分析結果を発表し、第二部では日本を代表するビジネススクールトップが一堂に会し、MBAの現状と問題点、目指すべきマネジメント人材教育などのMBA教育に対する熱い議論を繰り広げました。このような形で日本のビジネススクールのトップが集まり討論をする事は初めてのことであり、MBAを目指す方や企業人事担当者等の多くの参加者に、日本のMBA教育に対する理解を深めていただくシンポジウムとなりました。

第一部:アンケート徹底分析

太田康広(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 准教授)より、本書で実施した大規模なアンケート(企業150社とKBS卒業生600名)の調査結果の発表がありました。企業とMBA取得者の両面からMBAの価値を分析し、「現状、MBAホルダーは経済的満足度より精神的満足度のほうが高く、日本企業はMBAホルダーを十分に活用できていないことが多い。しかし状況は徐々に変わってきており、今後起こるであろう企業の変革に対してどういう備えをしていくか、企業はMBA人材を活かす場を考える必要があるのではないか」とまとめました。

第二部:日本のトップビジネススクールによるパネルディスカッション

パネルディスカッションは、MBAの認知不足への対策、カリキュラムの質的向上への取り組み、受験してほしい人材といったテーマをもとに各校の特色を踏まえながら、MBA教育の活性化について議論されました。MBAホルダーの企業採用についての話題に及ぶと、様々な意見が飛び交い活発な議論がなされました。

パネリスト

神戸大学大学院経営学研究科 研究科長 
加登 豊 教授
一橋大学大学院国際企業戦略研究科 研究科長
竹内 弘高 教授
早稲田大学大学院商学研究科 MBA/MOTディレクター
遠藤 功 教授
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 委員長  河野 宏和 教授

加登 豊教授(神戸大学大学院経営学研究科 研究科長)は、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」というドイツの初代宰相ビスマルクの言葉を引用して、企業のOJTに基づく人材育成の限界を示唆し、過去の多くの人々の英知と自分の経験とを相対化させて活動できる、MBA教育の有用性を説かれました。また、企業における研修のプログラム作りや講師は、ビジネススクールの教員が行っていることが多く、企業はビジネススクールの要素を既に活用しており、それならばMBAをもっと活用してみる価値はあるのではないかと、鋭い指摘をなされました。

竹内 弘高教授(一橋大学大学院国際企業戦略研究科 研究科長)は、ビジネススクールは企業のプロブレムソルバーとして求められることが多くなってきており、一橋ではファカルティが主役となってビジネス界の問題を解決している。それがロールモデルとなり、必然と学生にもマインドセットとなり、MBAの認知度を上げていくことになると述べられました。また、受験して欲しい人材として、具体的な名指しで「○○さんみたいになりたい」と言うようなパッションを持った人に来て欲しい、そのような学生は確実に伸びると、入学希望者に向けて助言されました。

遠藤 功教授(早稲田大学大学院MBA/MOTディレクター)は、2年間全日制のMBA教育は理想的ではあるものの、企業側・学生側ともに負担が大きい場合があり、様々なニーズに合ったカリキュラムでジェネラリストおよびスペシャリストの両方を育成していくことが必要であると話されました。しかし、近年、夜間のビジネススクールが増加しており、MBAを学ぶ機会は増えているものの、教育の質がともなっているのか、MBAの価値が正しく伝わっているのか、ということを検討することも重要ではないかと指摘されました。

河野 宏和(慶應義塾大学大学院経営管理研究科 委員長)は、MBAの認知度が低いのは全般的に広報・PRが足りないためであり、慶應義塾大学ビジネス・スクールの教員や3千名の卒業生と一緒になって、MBAのバリューを上げるような広報をしていきたいと語りました。また、国内のビジネススクールがこれまで連携してこなかったことも、認知度が向上しない一つの大きな要因であり、今回のシンポジウムを機会に各校と連携を図り、ぜひ意見発信していきたいとの見解を述べました。

シンポジウム総括

本シンポジウムは、日本を代表するビジネススクールのトップがMBAの実情を率直に討議した貴重なイベントとなりました。

またアンケートでは、「MBAを受けたい意思が強まった」「ビジネススクールを引っ張る方々の熱い思いを感じた」「自分のキャリアを自分で設計したい人に来て欲しいという遠藤氏の発言に感銘を受けた」「大学が連携を取り人材育成に取り組めば、日本人のレベル底上げも進むだろう」などのコメントがあり、パネリストの熱い思いが参加者に伝わったシンポジウムとなりました。

最後に河野 宏和より「MBAの活性化のために、もっと実行できること、あるいはそれを阻む要因等について議論する機会がこれまでほとんど無かったため、今回のこのようなイベントを初めて開催し大義は大きい。今後も各校と協力しながら日本国内にMBAを広く知らしめていきたい」と締めくくりました。

『検証 ビジネススクール』につきましては、こちらに詳しい情報がありますのでご参照下さい。
慶應義塾大学出版会ページへ

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