2013.04.15

平成25年度 研究科委員長より新入生に向けての挨拶

本日は入学おめでとうございます。実は「おめでとう」という言葉は、入学式のこのタイミングのみに似合う言葉です。なぜならば、これからは、2年間のタフな勉強のスタートだと思ったほうがよいからです。皆さんの机の上に分厚く積まれている資料を見ても明らかです。2年間でこの何倍もの文献やケースを読まなければなりません。そのくらい、多くを読み、学び、考える2年間だと思ってください。

最初に、少しだけKBSの歴史をお話しします。KBSが慶應義塾の中で高度人材育成を目的とする機関として設立されたのは1962年で、昨年、創立50年という節目を迎えました。これを記念して、「新しい時代へ:次の社会そして経営」という統一テーマの下、昨年10月に同窓会と合同のワークショップを行いました。そのとき作成した50年誌が、配布物の中に含まれています。また当日のワークショップで議論された内容は近々単行本として出版すべく、編集作業が進められています。

KBSが経営人材を育成する機関として学内に設立されたのは51年前です。短期の企業人向けセミナーを提供したのち、国内に未だMBAという課程が存在しない時代に、MBAの前身である期間1年のNon-degreeのコースを9年間にわたって運営しました。この試行期間を経て1978年に日本で初めてMBA課程を開始し、大学院経営管理研究科を創設しました。1978年入学者であるM1期から数えて、皆さんはM36期ということになります。

KBSでは、多くの学部のそれとは根本的に異なり、ケースメソッドという方法を用いて、皆が議論し合いながら学ぶ、という教育方法を採用しています。すなわち、教員が一方的に教えるのではなく、皆さんが「学び取る」という方法です。自分でケースを読み込み、ケースの当事者だったらどのような意思決定をするか、それは何故かということを考え抜き、準備をした上ではじめて討論に臨みます。予めケースを読み、自分の意思決定を考え、次に少人数のグループ討議を行い、最後に教員がリードするクラスでディスカッションを行うというプロセスをとります。今日こうして会った皆さんは、明後日から早速こうしたケース学習を開始します。過去の学部や勤務先での経験に照らせば、真っ先に発言することに抵抗があったり、「若いうちはおとなしくしていよう」といった感覚があるかもしれません。しかしケースメッソッドでは、全く違います。発言しないと進級できません。教員は、クラスでの発言を記録し、それを評価に反映します。ペーパーテストで点を取れば単位がとれる、という一般的な学部のシステムとは全く違います。実務の世界では、「書類を作成して終わり」ということは無いはずです。交渉では、相手とのやり取りの中で、ここぞというときの決断、意思決定が必要です。そのような意味で、経営の場面と同様の状況を教室の中で経験できるわけです。フレームワークを教わる場合はあるかも知れませんが、それをどう使っていくかの議論が中心です。経営の問題は、考えるほどに奥深くなり、面白さが増すという側面があります。

KBSでの2年間は、勉強に集中できる貴重な機会と捉えてください。卒業すると、まとまって勉強できる時間が与えられるとしても、おそらく重いミッションや宿題を伴うプロジェクトや海外での事業立ち上げといった実務的な責任が伴うはずです。

KBSのカリキュラム構成ですが、1年次では基礎科目8科目を履修します。工場勤務経験者であっても「生産」を、金融業界で働いていた人も「財務管理」を履修します。これは、経営の基礎を理論立てて分野横断的に理解することが、将来経営を担う上で極めて重要だと考えるからです。一方で、経営者・リーダーとなるためには、自分の強みを持つ必要があります。そこで、1年次後半から2年次に専門科目を習得してもらいます。KBSはT型人材を育成することを目指しています。T字の横棒は幅広い基礎知識、縦棒は自分が得意とする専門分野を指し、両方をミックスしてキャリアを形成してもらおうというのがKBSのカリキュラムの考え方です。心にとどめておいてほしいのは、ある分野を学ぶとき、その分野のみを見ていれば足りる、ということはないということです。マーケティングの課題であっても、人材、資金、オペレーションなど、分野横断的な発想が必須となります。総合的な体系の中で基礎と専門を学ぶというのが、KBSのカリキュラムの強みです。

もう一点、ぜひ触れておきたいのが国際化です。グローバル化が進む中、皆が海外に出て働く機会は多くなると思われます。KBSでは、国際単位交換プログラム(IP)に参加して、欧米やアジアの海外トップ校に留学することができます。一定の英語力と成績を満たせば、2年次の後半に学校を自由に選択でき、留学先での単位をKBSの単位に加えることができます。もう少し長い期間であればダブルディグリープログラムがあり、2年ないし2年半でKBSと提携校の二つの学位をとることができます。KBSは、現在IPで32校(ダブルディグリーで3校)と提携しており、日本のビジネススクールの中で圧倒的な海外とのネットワークを持っています。このチャンスに、ぜひチャレンジしてほしいと思います。また、何らかの理由で海外へ行けない場合でも、交換留学で日本に来る海外の学生向けの英語の授業に参加すれば、KBSのオンキャンパスで留学生と一緒に議論できます。こうしたプログラムに積極的に参加し、そのために英語のブラッシュアップもするならば、2年間はとてもタフで充実した勉強の時間になるはずです。

最後に、勉強や知識が重要なのは当然ですが、KBSは経営を学ぶところであって、経営学だけを学ぶところではありません。KBSは、経営リーダーとなる人材を育てるところであり、経営者・リーダーとしてやっていきたい、周囲を引っぱって行きたいといった、使命感や情熱を身に付けてほしいのです。日々のクラス討議の中から、周りのメンバーに「あいつは凄い」「あいつは熱い!」というものを示し、自分に足りないところは周りのメンバーから吸収してほしいのです。そうすることで、皆が人間としてステップアップし、将来どのような組織に入っても、そこでリーダーとして新たな道を切り拓いていけるのだと思います。そういう人をKBSは育てていきたいのです。

全ての教員がフランクに皆とやりとりする、というのがKBSの伝統です。黙っていては何も進みません。自ら問いかけ、積極的に行動すれば、一生の宝となる学びが得られるはずです。そう考えて、これからの2年間を有意義に過ごしてください。

2013年4月4日
慶應義塾大学大学院経営管理研究科
委員長 河野宏和

PAGE TOP