2016.04.19

教員紹介|太田 康広 教授

この記事はKBSレポートVol.12より教員紹介の内容を掲載しています。

最近の日本の電機業界においては、BtoBへ特化した日立製作所、パナソニック、三菱電機や、金融とゲームが好調だったソニーが堅調に推移した一方、東芝、日本電気、富士通、シャープの業績が冴えないなど明暗が分かれている。とくに、東芝は、2015年、不正会計問題が発覚し、その評価が大きく下がっている。第三者委員会を設置して、不正会計の全貌を明らかにしたかに見えたが、それ以後もウエスチングハウスの減損隠しが発覚するなど、現段階で収束する様子は見えない。

2015年4月3日、東芝は、インフラ事業において、工事進行基準の不適切な適用があったとして、調査を開始しました。調査の結果、総工費を過少見積もりしたとされています。工事進行基準というのは、長期請負工事の収益計上の方法です。工事が完成して引き渡したときに収益計上する工事完成基準とはちがって、工事が進捗するにしたがって少しずつ工事に関する利益を計上していく方法です。たとえば、契約価格100の工事の総工費が80と見積もられれば、この工事の利益は20と計算できます。決算時点で、20の工事費用が掛かっているとすれば、20/80=25%の進捗度と考えられるので、20×25%=5だけの利益を計上するのが、工事進行基準です。

ここで、総工費を40と過少見積もりすれば、利益は60と計算されます。そして、工事費用が20のとき、進捗度は20/40=50%なので、60×50%=30の利益を計上することになります。実際の総工費は80ですから、工事完成間際になって、残りの20の費用に加えて、40もの超過費用がかかり、結果として10の損失が出ます。きちんとした見積総工費によれば、5の利益と15の利益になるところ、30の利益と10の損失になるわけです。これが利益の先食いに等しいことがわかるでしょう。

東芝の第三者委員会は、バイセル取引という別の利益操作手法を説明しています。これは、パソコン事業において、安く仕入れた部品を製造委託先に高値で売却し、その部品を含んだ完成品を高値で買い戻す取引です。部品を買って (buy) 売る (sell) のでバイセル取引と呼んでいたようです。このバイセル取引は、買戻し条件付き売買にほかなりません。安く仕入れた部品を原価の5倍で製造委託先に売却したこともあったようです。

しかし、完成品を高値で買い戻せば、完成品の原価が切り上がり、その完成品を販売したときの利益が小さく出ます。つまり、バイセル取引も将来の利益の先食い計上にすぎません。

なお、東芝は、原子力事業のアメリカの子会社ウエスチングハウスののれんの減損を開示してこなかったことが明らかになりました。のれんというのは、よその会社をその会社のモノとしての価値を超える金額で買収した場合、その超過部分をいいます。日本の会計基準では、のれんは20年以内均等額償却されますが、東芝は、アメリカ基準採用基準なので、のれんを規則的に償却する必要はありません。その代わり、買収した企業の価値が毀損されたとき、のれんの減損を計上する必要があります。ウエスチングハウスが2012年度・2013年度の2年間で13億ドルののれんの減損を計上していたにもかかわらず、東芝はこれを開示してきていませんでした。減損処理が必要だったのはウエスチングハウスの4つある部門のうち一部だけで、4部門全体の価値は買収したときの価値を上まわっていたと説明されています。

東芝の2016年3月期の決算で、どのような処理がなされるのか、多くの関係者が注目しています。

太田 康広 (おおた やすひろ)

1992年慶應義塾大学経済学部卒業、1994年東京大学より修士(経済学)取得、1997年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、2002年ニューヨーク州立大学バッファロー校スクール・オブ・マネジメント博士課程修了、2003年Ph.D.(management)取得。2002年ヨーク大学ジョゼフ・E・アトキンソン教養・専門研究学部管理研究学科専任講師、2003年助教授を経て、2005年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授、2007年准教授、2011年教授。

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