2016.04.21

平成28年度入学式(MBAプログラム) 研究科委員長挨拶

経営管理研究科委員長の河野です。私から皆さんへの期待と、KBSで学ぶに当たって知っておいてほしいことについて、お話ししたいと思います。

すでに下田での合宿を終え十分に経験し理解されたと思いますが、KBSでの学習方法は他の大学院やビジネススクールのように、教員が講義を行い、皆さんがノートを取って知識が増えていくというタイプの授業とは大きく異なります。時折、「KBSで経営学の勉強をしたい」あるいは「経営の知識を増やして卒業したい」というように誤解されることがあるのですが、KBSは将来の経営者あるいは経営を担うリーダーを育成することをミッションとしており、経営についての知識を身につけることは、その一部分と考えています。例えば、新しいことにチャレンジしよう、何かを変えていこうという状況で、周囲の人を巻き込んで動かせる資質を持った人を育成したい、それがこの学校のねらいです。

そのような目的にかなった学習方法として、KBSは基礎科目を中心とする主たる授業でケース・メソッドを採用しています。ケースとは、企業や組織が直面した経営課題などを記述した教材で、それを読み込んで皆で討論を行います。例えば、新しいマーケティングの計画を実行するとなると、人や資金が必要となり、戦略あるいは現在の市場やターゲットに合致しているのかといった事柄を、経営トップとして瞬間的に考えなければなりません。全ての領域を跨いで、即座に判断できるのが本当のリーダーであり、トップ・マネジメントはそのような人でなければなりません。ケース・メソッドによって、皆さんにまず身に付けてほしいのは、こうしたジェネラルなスキルです。

我々はよく「T字型人材」という表現を用います。ジェネラルとは我々が「Tの横棒」と呼ぶ、分野横断的に物事を考え意思決定できる力を指しています。戦略、企業の将来像、個々人の動機付け、生産やマーケティングとの整合性、世界市場の流れに合っているか、といったことを同時に考えて意思決定をする、そのようなジェネラルな力です。そのために、経営の全ての領域をカバーする基礎科目8科目をケース・メソッドで学び、さらに各分野で20~25のケースを学ぶカリキュラムになっています。

基礎科目をケース・メソッドで学ぶことで、分野ごとの知見を自分の中で結びつけ、自分なりに整理していく方法論が身につき、「この業界ではこのようなことが大事だ」「このような局面ではこのような考え方が重要だ」といったことが、引き出しとして準備されるようになります。それだけでは将来にわたって準備万端ということにはなりませんが、これに卒業後の経験をプラスしていくと、皆さんの知識の引き出しが体系化されていきます。日本の大企業やスタートアップを含む組織のトップ・マネジメントには、「自分の専門分野以外のことは部下に任せる」と公言する方もいますが、ある分野の専門家であるということだけでは、経営者とはいえません。T字の横棒を十分太いものにするために基礎科目がある、と理解してください。

ここで誤解してほしくないのは、ケース・メソッドによって基礎科目を学ぶとき、単に良い成績を修めることが目的ではない、ということです。もちろん進級に一定の成績は必要ですが、自分の引き出しを充実したものにして、将来その引き出しに経験知をインプットできる準備を整えることが勝負だと思います。良い成績という短期的な思考方法では、KBSでの経験はその場限りもので終わってしまいます。そうではなく、自分の将来のキャリアのために自分の引き出しを増やしていく、という気持ちを持てば学ぶことは沢山あり、いくら学んでも学び足りないと思います。そのような姿勢を我々は期待しています。

もうひとつこの学校で学んでほしいのは、「T字の縦棒」です。我々はこれを専門性とかスペシャリティーと呼び、専門科目、ゼミナール、修士論文などによって身に付けてほしいと考えています。横棒だけで自分の強味が何もないということではなく、自らの専門を定め、深い知識を持ってほしいのです。いずれかの教員のゼミナールに属し、議論を重ね修士論文を仕上げ、併せて関連する専門科目を履修する。その結果、T字の縦棒すなわち専門性を少なくともひとつ身に付けることになり、それが、今後他者と議論するとき自分の依って立つ基盤となります。

2016年4月12日

慶應義塾大学大学院経営管理研究科

委員長 河野 宏和

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