2016.04.26

教員紹介|市来嵜 治 専任講師

この記事はKBSレポートVol.12より教員紹介の内容を掲載しています。

現場や人間的側面を重視した経営工学

私は、2015年の4月に、生産領域の有期専任講師としてKBSに着任し、生産政策、経済性分析、日本における生産管理、生産システム設計などの科目を共同で担当しています。慶應義塾大学理工学部の出身で、経営工学(Industrial Engineering)の研究室に所属していました。経営工学とは、人、もの、情報、お金からなるシステム上の問題を定義し、工学的アプローチをベースに解決していく技術であり、現場や人間的側面を重視するというところに、他の工学分野と異なる魅力を感じています。現在は、企業との共同研究を中心に取り組んでおり、実際に生産や物流の作業現場を分析して仕事のプロセスをきちんと把握すること、さらに、そこで仕事をされている方々の視点、作業負荷、働きがいなどにも配慮して改善していくことを重視しています。主な研究課題は、作業訓練の改善、生産準備の改善、間接業務の改善、生産管理活動の改善です。

例えば作業訓練の改善に関して、ある事務機器の組立ラインにおいて、製造コストを下げるために短期雇用の作業者を増やした結果、組付け不良の増加が問題になっていました。このため、新規雇用者の作業訓練にその内容を反映させながら、間違えないように手取り足取り教えることが重視されていましたが、十分な効果を得られませんでした。そこで、実際にその作業訓練のプロセスを分析してみると、一度に教えられる内容が多く、直後は覚えていてもその後に忘れてしまう場合や、覚えきれない場合があることがわかりました。さらに、基礎的な実験をとおして、訓練中の間違いは必ずしも悪いことばかりではなく、間違えることでより深い理解につながる場合があることもわかりました。これらのことから、教える内容を分類し、はじめは基本的な作業手順を教え、多少の間違いは許容して作業に慣れてもらい、注意点などの詳細な内容はその後に教えるという訓練方法に変更することで、訓練後の間違いを抑止できる可能性があることを示しました。

最近、大型の製造設備のメンテナンス作業や、鉄道車両の整備作業の現場を取材する機会がありました。これらはあまり注目される仕事ではなく、仕事の環境がよくない場合もありますが、製品の品質維持や安全な鉄道運行のために不可欠な仕事です。その難しさのひとつは、標準化がしにくいことです。例えば、一見すると標準的な作業でも、ちょっとした設備の異常や変化に気付けるかどうかが、整備の質や仕事中の事故防止に直結します。さらに、突発的な故障が生じた際、その原因を特定し復旧させるには、多くの経験や技能が必要になります。どのようにして仕事の環境を整えるか、そこで働く方々の技能向上や伝達、さらに気づきの感度をどのようにして高めていくかなど、多くの経営的な課題があると考えており、今後はこのような研究課題にも取り組みたいと考えています。

実際の仕事の現場に赴き、IE的分析による定量化・見える化や、そこで仕事をされている方々の視点による分析から、対象プロセスを把握してムダや課題を発見し、その解決や改善をとおして製品やサービスの生産性・質を向上していくことは、経営全体の中で見れば小さな活動かもしれません。しかし、そのようなことを繰り返して成果を積み上げていくことは、企業の競争力のひとつの基盤になると考えています。KBSにおいて、自分自身も視野を広げるとともに、自分の活動や研究の成果を講義やケース教材などにフィードバックし、学生や受講生の方々に少しでも貢献できるよう努めていきたいと考えています。

市来嵜 治(いちきざき おさむ)

1999年慶應義塾大学理工学部管理工学科卒業、2001年同大学大学院理工学研究科修士課程修了、2007年同博士課程単位取得退学、同年博士(工学)(慶應義塾大学)取得。2009年慶應義塾大学理工学部管理工学科助教(有期)。2014年成蹊大学理工学部助教(有期)。2015年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科専任講師(有期)。

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