2017.05.02

2017年度入学式(MBAプログラム)研究科委員長挨拶

皆さん、KBSへようこそ。まず初めに、この2年間どのような事を学んで欲しいのか、KBSがどのような学校であるかをお話ししたいと思います。午前中の大学院入学式では、慶應義塾全体の基本的な考え方について塾長から話がありました。この経営管理研究科は経営学を学ぶ学校ではない、ということを最初に覚えておいてください。経営人材、すなわち将来経営リーダーあるいは経営者になろうとする人材を育成することがKBSの目的です。もちろん、さまざまな専門分野の学問は大切ですが、皆さんに一番学んで欲しいのは、経営者にはどのような素養が必要かということです。

そのためにこの研究科が採用しているのは、ケースメソッドと呼ばれているディスカッション形式の授業です。すなわち、企業の経営事例を実際にまとめたケース教材を事前に読み込んで、自分ならこちらの方向を選択する、あるいはこの判断には反対である、といった意見を皆さんが持ち、その理由を整理した上でクラスに来て議論をする授業です。ノートを取って覚えればそれが試験に出るというような授業は、極めて少ないと思ってください。ケースに関するクラスでの発言が無いと、基本的には成績が付かない授業スタイルです。たくさん発言することだけが全てではありませんが、自分で意思決定をした上で他の人の意見に耳を傾ける、そして意見が異なる場合にははっきりノーと言ってからその理由を説明する。こうした発言力、意思決定力を、KBSの2年間で磨いて欲しいのです。ケースを読み込み予習をして授業に臨み、議論の中で自分にはどのような見方と知識が足りないのかを考える。こうした授業が日々繰り返されると思ってください。特に1年目の基礎科目では、毎日ケース討議が繰り返されます。1日2ケース、1科目では20~25のケースを取り上げます。これが8科目あるので1年間で200くらいのケースを勉強すると思ってください。これがKBSでの教育方法の大きな特徴です。

次にカリキュラムの全体像に触れておきたいと思います。我々が育成したい人材像やカリキュラムの構造はホームページに書いてありますが、KBSではしばしばT字型人材という表現を使っています。T字の横棒は、ジェネラルな知識やスキルを表しています。リーダーは経営の知識を幅広く複眼的に身に付けておかなければいけないということです。一方で、T字の縦棒は専門性を意味します。何らかの専門性を持っていないと、自信を持って意思決定をして人を導くことが出来ないという意味で、専門性を磨き深めて欲しいのです。今の時代では、縦棒がπという文字のように二つあった方が良いと言われるほど、専門性は強く求められています。では、実際にどのようにして専門性を身に付けるかというと、多くは専門科目や2年生になってのゼミ、修士論文の作成過程で徹底的に鍛えていくことになります。ここまでがT字の横棒と縦棒に相当します。

加えて、私はT字の周りに二つの重要な要素があると考えています。その一つは経営リーダーとしてのマインドセットです。経営者やリーダーとして使命感を持ち、「よし、やっていこう」という気概、情熱のことです。これはケースディスカッションの中で、自分の発言に責任を持って相手を説得することを通じて、あるいは様々なフィールドワークや修士論文作成過程で、他の仲間や優れた先輩を見ながら、身に付けていってもらいたいと思います。

そして、T字の周りにある大切なもう一つの要素は国際感覚です。グローバル化が進む中で、海外に出て行って堂々と自分の意見を言える能力です。近年では、アジアの人たちもどんどん海外に出て行って活躍する時代になっており、日本がこのままでは取り残されるという危機意識を持っています。しかし、国際感覚とは単なる英語力のことではありません。英語は上手くなくてもノーとはっきり言える感覚、続けて身振り手振りでも構わないからその理由と自分の意見を伝えることができる能力です。中身が無く巧みに英語で話せるだけでは全く国際人ではありません。海外の人が来たら日本の良さを伝えられる、もちろん日本の課題も堂々と伝える。その上で海外から学ぶ点に耳を傾ける。そうした、異文化の人たちに自分の考えを発信し、異文化の中で学ぶ姿勢がリーダーとして不可欠です。こうした国際感覚を身に付けるために、国際単位交換プログラムや海外フィールドワークの機会を用意しています。海外から留学生も数多くKBSに学びに来ます。皆さんにも単位交換留学のチャンスがあるので、どんどんそうしたプログラムにチャレンジして欲しいと思っています。

この学校の授業は、ただ黙って座っていれば、教員が答えを全部教えてくれるという形ではありません。自分で課題を考えその答えを見つけ出す、もっと言うと、問題発見のプロセスの中で意思決定の能力を磨いて、併せて使命感、国際感覚を身に付けて欲しいと希望しています。2年間を有意義に過ごせば、その分学びが大きくなる学校です。2年後の修了時に、皆さんの目が一段と輝いて充実していることを期待して、入学のお祝いの言葉としたいと思います。改めて入学おめでとう。そして、2年間充実したKBSライフを過ごしてください。

2017年4月4日
慶應義塾大学大学院経営管理研究科
研究科委員長 河野 宏和

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