2018.05.24

2017年度学位授与式 研究科委員長式辞

本日、MBAプログラムとExecutive MBAプログラムを修了し、学位を取得された合計128名の皆様にお祝いを申し上げます。さらに皆さんをサポートしてくれたご家族の皆様や会社の方々にもお祝いを申し上げます。

2年前に皆さんは、MBAプログラムあるいはExecutive MBAプログラムに入学し、これからどのような学校生活になるのかという期待と不安を持ちながら、下田の合宿、ビジョナリーの学習からプログラムをスタートされました。2年間色々なことがありつつ、人によっては長く、あるいは短く感じてこの日を迎えられたことと思います。

慶應義塾大学のビジネススクールがどのようなところかについては、既に皆さんは体験されたわけですが、どのようなことを学んで欲しいと私達が考えていたかを改めて振り返ってみたいと思います。ビジネススクールというと経営学を学ぶ学校と一般には言われますが、我々は経営学の習得を主たる目的とするのではなく、ビジネスリーダー、経営リーダーを育成することを使命としています。経営リーダーを育成するために、教員が研究活動に加えて教育活動に従事する学校がビジネススクールだと思っています。

その中で、基礎科目(コア科目)はケースメソッド中心で勉強し、体系的な経営の知識が身に付くカリキュラム体系になっています。ケースメソッドで学ぶ目的は知識を身に付けることだけではありません。意思決定の能力、様々な経営の場面で決定事項を実行出来る力、意思決定を支える信念や理念、志、こうしたものを関係付けながら磨き上げて欲しいというのが、我々の狙いです。

まず、知識の量という観点から、皆さんの学びは今日が終りではないということを覚えておいてください。これからは、KBSで育んだ知識の引き出しに新たに取得した知識を加え、皆さんのキャリアの中で生かせる知識体系として整理していって欲しいと思っています。そして、そのための基本的な視座を学んだという証が、今日の学位授与式だと考えております。これから社会に出て経験を積みながら、KBSのケースメソッドで学んだ分野横断的な知識と、様々な場面での意思決定のプロセスを、自らのキャリアで使える財産となるよう、自分なりに整理していって欲しいと考えています。

また、実行力も重要なポイントです。これは、単に知識を持っているだけではなく、組織の中、企業の中、社会の中で知識を生かしていく力を意味しています。知識を持っているだけでは社会は変わっていかないし、自身が先頭になって周囲の人たちを引っ張っていくことはできません。その知識を使って組織を変えていく、社会を引っ張っていく、そういうリーダーに是非なって欲しいと思っています。そのような場面では、皆さんの人間性やコミュニケーションスキルが前面に出てくると思います。そういう時、もう一度KBSを振り返り、授業で学んだこと、仲間と議論しあったことを思い出し、自分に足りないところがあるならば、もう一度実行力をブラッシュアップしていって欲しいと願っています。

さらに、どのように組織、企業、社会を変えたいか、それに対してどれくらいコミットできるか、信念を持って取り組んでいけるか、その理念、志について、今後も考え続けてほしいと思っています。修了後も仲間と議論をしながら、それぞれのキャリアの中で考えを深めていってください。そうすると自分に足りない知識や実行力が見えて来る、そんな循環で今後もまだまだ学びの時間が続いていくと思っています。

修了にあたって幾つか付け加えておきたいことがあります。ビジネススクールを修了すると、MBAの学位を取得したのだから社会のエリート層として活躍すべきだと言う意見を耳にすると思います。これを決して否定するものではありませんが、社会には様々な人が居るということを忘れないで欲しいと思っています。ビジネススクールに来られる環境ではない人、経済的理由、地域的理由、会社や家庭の事情などで学位を取得する機会は得られなくとも、実際にモノを作ったり、販売したり、計画したりして、皆さんと協力して仕事をしている人が沢山います。もっと言えば、少しハンディを持って社会で暮らしている人も大勢います。そういう人達のことを全て視野に入れて物事を考えることが出来るような度量のある人になって欲しいのです。自分達はMBAなのだとひけらかした瞬間に、人々は皆さんから離れていきます。それでは絶対に社会を変えていくことは出来ないのです。

また、IT化、グローバル化など、社会の状況変化が激しいために、それを追いかけなくてはいけないという強迫観念に囚われがちだということにも気をつけてください。インターネットなどを通じて次々に新しい情報が入って来るので、変化に敏感に対応しながら学び続けなければならないのですが、一方で意思決定をしたり組織を変えていく時、決して忘れてはいけない視点があると思っています。そういうことを考えることが出来るのが本当のMBAなのではないかと思うのです。

社会の流行とか先端のことを次々に吸収して発信していくだけでは本当のリーダーにはなれません。物事の本質を見極め、変わらないものは何なのだろうと考えられる能力が大切です。人生の時間が限られ、考えられる能力も限られている中で、いかに上手く自分の力を生かし他の人の助けを借りて意思決定していくか、組織を変えていくかを考えて欲しいと思います。流行を追いかけるばかりが大切ではないことを常に忘れないで欲しいと願っています。

最後に、社会のグローバル化が進行する状況下で、これから日本および日本の経済社会はどうなっていくのか、どのような社会であるべきか、どのように変わっていって欲しいのかを、修了生の中の大勢の留学生も一緒に、皆で考えてほしいということを伝えておきたいと思います。

東南アジア、中国、韓国、日本を取り巻く様々な状況の中で、日本のビジネスや経済社会がこれからどのように発展し、変わっていかなければならないかを考える能力を養ってください。そして、さらにもっと広い視野で、世界の色々な地域で貢献するビジネスとはどういうものなのか、そこで必要なマネジメントとはどのようなものなのかを考えるような、国際的な感覚を持った人材になって欲しいと願っています。日本の良さ・特徴や課題を周囲の人たちに伝えると同時に、世界の人々と堂々と議論をし、違う意見に対してNoと言ってその理由を説明出来る能力、いかなる手段でもコミュニケーションが出来る国際的な感覚を持った人になって欲しいと希望しています。

KBSには同窓会という強い絆を持った組織があり、そこで活躍して成果を共有し、その成果をまたKBSの研究活動に生かしてもらう、それがKBSのネットワークの強みであると思っています。今日学位授与式を迎えた仲間、教職員と一体となって、今後もKBSに貢献して欲しいと願っています。

重ねて、本日は本当におめでとうございます。

 

2018年3月28日

慶應義塾大学大学院経営管理研究科

委員長 河野 宏和

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