2018.05.24

2018年度入学式(EMBAプログラム)研究科委員長挨拶

皆さん、入学おめでとうございます。今日から2年間の学びのスタートとなります。まず、Executive MBA(EMBA)プログラムとはどういうものか、どのような意図で我々がEMBAプログラムを運営しているかということをお伝えしたいと思います。

皆さんは、EMBAプログラムの4期生になります。2期生がこの3月に修了したので、実際にプログラムがスタートしたのは3年前ということになります。KBSは、1962年に日本で初めて社会人向けにノンディグリーのエグゼクティブ教育を提供する機関として設立されました。そして、1978年からは全日制のMBAプログラムをスタートしました。2000年代に入ってから、様々な学校がMBAプログラムを開設し、文科省も2003年から専門職大学院としてビジネススクールといわれる学校の認可をしてきたという状況にあります。

近年の世界のビジネススクール情勢、特に中国、韓国、東南アジア等の国々の状況を見ていると、様々な世界規模のビジネススクールが成長しています。一方で日本では、企業、あるいは組織の中心になる人が、経営の勉強をして、企業組織を引っ張っていくという文化が根付いていません。基本的にはOJTで自身の担当領域をこなし、次に役職につき、段々と経営層に入っていきます。しかし、今までずっと1つの部門だけしか経験していない人がいきなり経営で力を発揮できるかは疑問です。経営の意思決定のシーンに触れたことがないから決められない、だから本社に持ち帰ってというのは、皆さん数多く経験されていることだと思います。

KBSは、そうした状況では世界のビジネスの中でリーダーシップを取っていくことは難しいと感じ、企業の中核人材の育成をしたいという想いからEMBAプログラムを開設しました。中核人材とは、ある程度の勤務経験を持っている人たちを指します。その人たちに、働きながら2年間週末集中型で勉強してもらうという形で、このExecutive MBAというプログラムを始めました。

他校でも、Executiveというプログラム名称を使用している学校がありますが、集中的に2年間、ほぼ全ての週末を使って勉強するタフなプログラムを提供しているのは、KBSだけです。そういう意味では、Executive MBAプログラムを提供する学校として、日本におけるフロントランナーと理解していただいて良いと思います。

日本、あるいはアジアの中での日本、あるいはアジア全体、さらに広くいうと、世界の中での経済社会の動きを先端的に捉えて、どうあるべきかということを考えられる人材になって欲しいということが、皆さんに最も期待していることです。そういう意味でのリーダーになって欲しいのです。しっかりと勉強をして、改めて自分を見つめなおし、経営を考えなおし、将来のリーダーになって欲しいと期待しています。

将来のリーダーというのは、土曜日に授業で学んだことを月曜日から会社でトライしてみる、という即戦力でありながら、同時に長期的な視点で、経済社会の動きを考えることができる人材でもあります。長期的に、自分の次の世代、その次の世代が暮らしやすくなるために、この地域、組織、企業が何をしなければいけないか、今何が足りないか、その中で自分にどういう貢献ができるか、というような視点を持って欲しいということを強く期待しています。

EMBAでは、職務経験15年相当以上という入学条件を設けています。今まで経理、会計、生産、営業といった様々な職種を経験して来られている方がいらっしゃると思います。また、自分で経営しているという方もいるでしょう。実務経験が豊富な皆さんに、カリキュラムに触れながら、どういうことを学んでほしいかという話をします。

まず1つ目は、コア科目についてです。各分野の先端的な内容と基本的な理論をケースメソッドで毎週学び、もう一度経営の基礎を勉強してもらいます。1年目は各分野1科目ずつ、8ヵ月間かけてコア科目を勉強していきます。皆さんが実務で経験してきたことをもう一度理論的に棚卸ししてもらうことが目的です。例えば、公認会計士の資格を持っている人でも、会計の視点で他の分野を見るとどうか、会計の理論と実務はどうつながっているか、というようなことを考えてもらいます。また、意思決定の際に、分野横断的に知識を使い経営を判断するとはどういうことなのかをもう一度再認識して欲しいと考えています。

2つ目は、長期的視点の大切さです。そのために、ビジョナリーという科目を提供しています。今から40年後の社会を想定して、そこに向けて何が足りないか、社会のどこで何をどのように変えていかなければならないか、また、どの業界がどういう風に変わっていったら良いか、というようなことを皆さんでグループ討議をして、最終的には2年目の最後に成果物としてまとめるという科目です。全員の意見を統合して一つの成果物にまとめるというのは、とても大変な作業です。2~3ヶ月に一度のペースで成果発表、中間発表を繰り返しながら、2年間の最後に成果物としています。この科目は、EMBAプログラムの大きな特色だと思います。

それから3つ目に、経営者討論という科目があります。様々な業界の経営者や経営幹部の方に来ていただき、皆さんと討論するという授業を1年に8回行っています。そういう経験を積むことで、評論家や批評家にならず、もし自分がこの会社の経営者になったらこの人と同じような経営判断が出来るか、あるいは少し違う視点で意思決定が出来るか、この人はどういう使命感でこの会社や業界を引っ張ろうとしているのか、というようなことを考えてもらう科目です。理論や知識だけなら本やネットから学ぶことができますが、その裏側にあるマインドセットをどの位学ぶかということを我々は重視しています。

そして4つ目は国際感覚です。国際感覚というのを語学力ではなく、海外の人と堂々と議論できる感覚だと考えています。日本人中心で、日本語で議論をすると自然に仲間意識が生まれてくると思います。しかし、ビジネス社会はどんどんグローバル化しています。ですから、EMBAでは年2回、1週間海外に出かける海外フィールドという科目を設けています。国際単位交換プログラムを利用して、3~4ヶ月間海外に留学できるチャンスもあります。この期間は休職しなければなりませんが、毎年EMBAからも何人か交換留学に参加しています。これからは、さらに国際感覚を体得できるようなカリキュラムを考えていかねばならないと考えています。例えば一定期間、完全な異文化の環境に身をおき、議論をするようなカリキュラムです。今まで仕事の場面でそういう経験をされた人も多いと思いますが、学生という立場で自由に議論が出来るというのは、非常に貴重だと考えています。

普段は会社の看板や、責任を負いながら仕事をしなくてはいけないかもしれませんが、KBSではそれを脱ぎ捨てて、たくさんの仲間からお互いの業界のことを学んでください。教員が一生懸命教えるというよりも、皆さん同士が議論する過程から学んでもらうことが大切だと思っています。EMBAの学生だけでなく、全日制のMBAの学生や、海外から留学に来る人もいます。そういう人たちとたくさん交流してもらうと、ネットワークはさらに大きく広がります。様々な人と交流し、自分のマインドセットを磨いて欲しいと期待しています。KBSの大切なプログラムとして、我々も授業に参加しますので、これから2年間、よろしくお願いいたします。

改めまして、本日は入学おめでとうございます。

 

2018年4月9日

慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長

河野 宏和

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