2018.05.24

2018年度入学式(MBAプログラム)研究科委員長挨拶

皆さん、入学おめでとうございます。まず皆さんに、KBSがどのような学校であるかをお伝えしておきたいと思います。

日本の中でビジネススクールというと、経営学を勉強できる、あるいは経営の知識を身に付けるための学校だと言われる場合があります。もちろん、経営の知識を身に付ける勉強もしますが、KBSの目標は、将来経営を担うリーダー、ビジネスリーダーを育成することです。経営の意思決定が出来る人、周りを巻き込み先頭に立ち、組織や社会を方向づけていける人、そういう人材を育成することがねらいです。机上で学ぶだけでなく、様々にその学びを融合して知識を体系化したり、あるいは実行力やコミュニケーションの能力を身につけていくことが、この2年間に皆さんに求められる課題だという風に認識していてください。

少し、授業の進め方についてお話します。KBSでは、いわゆるスクール形式で一方的に教員が教える授業はほとんどありません。ほぼ全ての授業でケースメソッドを採用しています。実際には、ケースと呼ばれる教材を前日までに読み込み、自分が当事者であったらどちらの方向を選ぶか、それはなぜか、といった経営上の意思決定を熟考し、その内容を持ち寄って教員の誘導のもと、皆で議論していく授業です。例えばマーケティングでは、マーケティングプランを実行するか否か。もし否であれば、他社が実行した場合に競争上不利になる。しかし実行するとしたら、人や資源をいかに調達するかという別の問題が出てきます。そのような場面で皆さんならどうするか、と問われる状況から授業が始まります。マーケティングの理論を知っていれば良い発言が出来るということではなく、しっかりとケースを読み込み、準備をして授業に臨むことがとても大切です。そして、前の人の議論に対して、自分が違う意見だったらはっきり違うと言う。お互いの主張の中で議論を戦わせながら、学びを深めていく。そういう形式の授業です。基本的に1年目は、ケースメソッドで日々自分の意思決定の力を磨いていく授業が中心になります。

意思決定を出来る能力ということについて、私が考えていることをいくつかお伝えをしたいと思います。1つ目は、経営能力の意味についてです。ビジネスリーダーになっていくためにどういう知識体系が必要かというと、経営全般を見渡す力です。幅広く様々な分野の知識体系を知っていて、分野横断的に融合して使いこなせる能力。これを一般的にはジェネラリストの能力と言いますが、KBSではT型人材という呼び方をしていて、経営全般の知識体系をTの横棒と捉えています。そして2つ目は、専門性という部分です。これがTの縦棒です。自分の強みとなる分野の専門性を磨き、深い知識を持って欲しいと考えています。実際には専門科目、あるいはゼミや修士論文の作成を通じて縦棒の専門性を磨いていきます。ただ、それだけで十分ではありません。私が最も大切だと思っているのは、その周りを囲む要素です。ビジネスリーダーとして社会に貢献をしたい、日本の将来をこういう風に引っ張っていきたい、わが社を、わが業界をこういう風に変えていきたいというような志や使命感のようなものこそ、Tの周りを囲む3つ目の要素です。

ビジネススクールで学んでいると、しばしば知識偏重になって志や使命感を忘れてしまう場合があります。大学や大学院という環境だと特に、単位や成績を重視しがちです。しかしそれよりも、マインドセットや志をいかに磨いていくかの方が大切だと考えています。ケース討議の中で、あるいは様々な特別講演で話を聞く中から、またゼミや修士論文で仲間と濃密に一つのテーマについて議論しながら、周りの人から学ぶという形で志は磨かれていきます。このように、Tの横棒、縦棒、そして周りを囲むもの、この3つが、KBSの2年間で是非皆さんに身に付けてブラッシュアップして欲しい素養です。

それから、それら3つ以外に、今日の社会の中で非常に大事だと思うことを2つ付け加えたいと思います。1つ目は、国際化です。異文化の人たちと仕事をしなければならない場面は、既に皆さんの働いていた環境でもたくさんあったと思います。多様性の中でいかに自分の考えを伝え、相手の発言に耳を傾けるか。言葉のうまさではなく、異文化の人たちとコミュニケーションをとれる能力、そこで堂々と自分の考えを伝えていける感覚を皆さんに是非養って欲しいと考えています。そのためにKBSでは、国際単位交換プログラムやダブルディグリー・プログラムという制度を用意しています。また、海外の協定校からもたくさんの留学生がやってきますし、その人たちと一緒に授業を履修できる環境があります。是非そうしたプログラムに活発に参加して欲しいと思っています。

2つ目は、本質を見極める力です。非常に変化が激しい時代で、様々なテクノロジーの変化や技術革新が日々進んでいます。そういうものに対して、当然に敏感であって欲しいのですが、流行のAIやIoTを使いこなすことだけが全てではなく、一歩立ち止まり、AIやIoTの何を活用したらいいのか、何が大事なのか、ということを仲間と議論しながら、深く考えて欲しいと希望しています。そうした力を育てることも、フルタイムで2年間学ぶときの大事な要素だと考えています。

これからの2年間、たくさんの学びがあります。学びだけでなく、この2年間で出会う仲間というのは非常に大事です。MBAプログラムの同窓会メンバーや、3年前に開設されたExecutive MBA(EMBA)プログラムの学生もいます。是非、年次や課程の違う人たちや海外からの留学生、教職員、他校の仲間、そういった人たちとの交流をどんどん増やしていってください。教育や研究活動にも積極的に参加し、充実した2年間にして欲しいと期待しています。改めて、入学おめでとうございます。

 

2018年4月2日

慶應義塾大学大学院経営管理研究科

委員長 河野 宏和

 

PAGE TOP