エレクトロニクス産業の競争力と収益力
金 政煥(Kim Junghwan)
本研究は日頃持っていた‘エレクトロニクス産業はハイテク産業でありながら競争の激しさにより収益性は低い’という問題意識から出発する。即ち、経営 者や戦略立案者は絶え間がない技術や製品の改良と急速な価格下落の二重苦に追われていながらも自分たちがその競争の先頭に立つために尽力するという、窮るところを知らぬ悪循環の状況であると感じられる。
一方、一言でエレクトロニクス産業といっても、製品あるいは事業分野の多様性により、経営者が戦略的な意思決定に臨む際にその競争状況や収益性を体系的に考慮しながら考えることは非常に難しい と言われている。
したがって、本研究の目的は、エレクトロニクス産業の競争力と収益性を分析するためのフレームワークの一例を提示することで、現業で戦略を立 案する際に役に立つようなヒントを提供することにしている。現実的な分析の手段 になるには分析対象の範囲を限定する必要があり、二つの工夫が行われている。
まず、世界のエレクトロニクス産業を支配している日本のメーカーを対象にし、また、競争状況がエレクトロニクス産業構造の典型的な例だと判断される事業を事例として挙げる。
分析にはM.ポーターの競争戦略及び競争優位の論理に沿って、3つの段 階が含まれている。第1段階で、エレクトロニクス産業構造を分析し、5つの競争
要因の水準やファクシミリ事業を事例として挙げることの妥当性を確認した。第2段階で、戦略グループと移動障壁の影響を分析した。第3段階で、価値連鎖及び事 業間の関連性の概念を活用して、企業ことの競争力と収益性に差が発生する源泉を
分析した。選定されたメーカー6社に設問調査を行った結果から、原価動因及び差別化動因のなかで、市場変化と整合性のあるマーケティング政策、海外生産政策、 相互関連性などの多数の項目の影響が確認された。