顧客価値構造とベスト・プラクティス
−顧客価値構造へ遡及するマーケティング−
M19 伊藤 裕
本論文では、消費者が製品を通して潜在的に実現を願う価値に焦点を当て、ヨリ中心性の高い価値のレベルで、差別化を図るマーケティングの方法を検討している。
製品と価値との関連を構造的に理解するために、Ladderingを用いた。これによって、一般的に関与が高いと思われる自動車と関与が低い銀行の価値構造を調査した。
自動車の場合、特定の属性と特定の価値とが結びついている場合がある事が確認された。これより、(1)ヨリ中心性の高い価値へ遡及し、関連性を強める(2)中心性の高い価値へ遡及する際に、新たな属性によって遡及する方法と関連する低位な価値へ遡及を試みる(3)既存の属性によって新たな中心性の高い価値へ遡及する、の3つの遡及パターンが検討された。
一方、銀行の価値構造は、社会心理的結果を頂点に低い次元でヒエラルカルな構造を成し、価値との関連が希薄である事が確認された。これより、(1)中心性の高い価値への遡及を試みる(2)銀行における最も中心性の高い価値へ遡及する。(3)さらに中心性の高い価値へ遡及する、方法の可能性について検討した。
銀行業界は、ビッグバンを背景に今後急速に淘汰が進む事が予想され、差別化が必要となる。本マーケィングは、同質化の激しい銀行の製品に新たな視点から差別化をする道を与えるものである。