新消費社会における情報通信機器のマーケティング
M19 清水 まり
マルチメディア・ブームの中、消費者市場に投入された携帯電話、ファクス、パソコン通信といった新しい情報通信機器は、着実に普及を続ける過程で様々なライフスタイルの消費者によって、耐久消費財として、またメディアとして、その新たな用途や意味が創造されている。この背景の下、企業はその市場ニーズをどのような視点で捉えていくかがマーケティング戦略ひいては製品開発の上において重要な課題となっている。
消費者行動に関する研究では、消費者は製品知識構造の中で、製品利用を通じたより好ましい行動様式を「価値」として求め、それが製品利用の目的であるとし、価値を捉え、また製品属性、それがもたらす結果、価値との結びつきを把握することがマーケティング戦略の構築上重要であるとしている。そこで、本研究では、実証研究により、携帯電話、ファクス、パソコン通信といった新しい情報通信機器の利用者が、それらに対してどのような「価値」を消費目的として求め、それが製品特徴や用途とどのように結びつき満足されているかを解明することで市場ニーズが捉えられ、課題の解決に結びつくものとして取り組んだ。
研究の結果、携帯電話、ファクス、パソコン通信に求められている3つの価値が発見された。1つめは、携帯電話に求められている「自由空間での自分存在のリアリティ」という価値で、本拠地である自宅を離れても友人や家族等の所属集団に自分の連絡所在を明確化し、帰属意識や共生感を持つことができるというものである。2つめは、携帯電話とパソコン通信に求められている価値でおしゃべり電話がさらに進化した「自分浮遊のリアリティ」である。3つめは、携帯電話とファクスに求められている従来からの通信の本質ともいえる「効率化した、また、楽しく活性化した生活時間を送る」というものである。さらに、具体的な製品特徴の今後の有用性として、電子文字、パーソナル通信、移動体通信のプライベート・コミュニケーションでの有用性も発見された。