小売業の国際化戦略

− 外資系総合小売業者の日本市場での可能性 −



 国内の小売業者が低迷を続ける一方で、外資系企業の進出が目立っている。

 日本の小売市場は、人口と所得水準から見れば世界有数の魅力的な市場であるといえるが、同時に「特殊性」という意味で、海外小売業者にとって参入困難とも思われてきた。しかし、こういった観点から見れば、日本の小売市場は参入阻害要因が大幅に減少しつつあるといえる。規制緩和や地価・賃貸料の低下は外資系小売業にとって追い風となっている事は間違いないだろう。

また、最近の傾向として目立っている点は、アメリカで最大のホールセールクラブであるコストコ社が福岡県久山町に日本1号店を開店し、また、世界第4位の小売業である、フランスのハイパーマートを中心とした小売チェーン、カルフールが2000年の千葉への出店を表明するなど、世界的な大規模チェーンが相次いで日本市場をねらっている事である。「これら外資系総合小売業者が今、日本進出をねらっているのはなぜなのか」また、「これらの小売業者は一部の人達が言うように、日本の小売業者にとって大きな脅威となるのか」というのがこの論文によって明らかにしたい点である。

 本論文は事例研究により行った。取り上げる事例は「ボディーショップ」「トイザらス」「セブンイレブン」である。それぞれ特徴の異なった、かつ、代表的事例と思われる。進出先市場において、商品政策とオペレーションシステムをどのようにマネジメントしているのか、また、環境要因について分析した。 確認できた点は、1)成功要因として、商品面だけでなく、システム面での現地適合が重要である事、2)進出先市場において業態としての強みを維持できる環境がある事が重要である事、である。

 続いて、総合小売業者の代表例としてカルフールの分析を行った。結論としては、日本市場においては、環境面の問題が大きく総合小売業者が成功をおさめる可能性は小さいと考える。