第3分野生命保険市場における顧客の購買行動分析
M22 後藤 正浩
2001年1月、規制により外資系生命保険会社および国内中堅生命保険会社のみに販売が限定されていた第3分野生命保険市場が大手生命保険会社にも開放された。この第3分野生命保険とは、健康保険などの公的制度を補完することを目的とした保険群(がん保険や医療保険など)であり、医療費自己負担の増加などを背景に今後の成長が見込まれていた。ゆえに規制撤廃後は多くの保険会社の新規参入が予想され、規制により競争のあまりなかった市場が一変すると考えられた。
本研究では、第3分野でも今後のその動向が注目される「がん保険」に焦点をあて、そこでの顧客の購買行動を対象にした実証研究を行っている。分析では、「顧客に選ばれる」ことを契約時に選ばれるだけでなく、「契約後も選ばれ続けていく」ことと考え、「契約時商品選択」、そして「追加契約」や「解約」における顧客の行動に注目している。
「契約時商品選択」では、“購買関与度”および“製品判断力”の概念を用い、その高低による顧客の“重視する情報源”や“重視する内容”の相対的な違いを明らかにした。「追加契約」の分析では、購買関与度が低いときに顧客が用いる情報処理の1つ“カテゴリー化”に注目した。契約後の商品に対する評価は、それと類似度の大きい商品の追加契約検討する際、カテゴリー化によりその検討している商品の評価に影響を与えるということが確認できた。「解約」の分析においては、契約時の購買関与度を規定する要因の1つである“製品関与度”が、契約後はその高低により商品の解約理由に影響を及ぼすことがわかった。
そして、分析結果をもとに「顧客に選ばれるためのマーケティング戦略」として「新規顧客獲得」「クロスセリング」「顧客囲い込み」について提言を行っている。