商業中心型外資系小売業の研究
−外資系小売業のグローバルな強みとは?そして、日本市場戦略はどうとるべきか−


M23 藤野正規

 


 本論文では、自社ブランド品ではない商品を扱う外資系小売業が、歴史的に日本市場にてなかなか成功していない点を問題意識としてとらえ、商業中心型の外資系小売業の日本進出にたいして提言を行うことを目的とした。

外資系小売業の日本進出は、70年代から始まったが、その当初は自社ブランドの販売を中心とした小売業の参入だった。一方、商業中心型の小売業の進出は90年代に加速したが、そのパフォーマンスは決して高くはない。現段階で成功していると判断できる企業は残念ながら3社程度しかない。

本論分ではその成功しているタワーレコードやHMVなどのAVソフト販売店と、玩具カテゴリーキラーのトイザラスを取り上げた。

その3社の成功を文献及びインタビューから分析するためのフレームワークとして、3つのモデルから分析を行った。

1つ目は小売業の国際化要因としてのプッシュ要因・プル要因に注目し、小売業の国際化を分析するモデル。

2つ目は小売業が日本市場に参入する際の参入モードを、戦略変数・環境変数・取引費用変数から決定する、参入モードの意思決定モデル。

3つ目は小売業の組織間関係及び組織内関係と小売業の機能に注目し、その2つの要因を結集して小売サービス水準と顧客価値水準へ結びつけるモデルである小売イノベーションモデルに、国際的な視点を加味したグローバル小売イノベーションモデルである。

文献研究については、基本的に企業から顧客に対しての視点が中心となっていたので、顧客の立場から商業中心型外資系小売業を分析するために消費者アンケートを行った。そのアンケートは日本トイザラス社を対象として行った。その枠組みはグローバル小売イノベーションモデルの顧客価値水準と小売業の提供する小売サービス水準の視点から分析を行った。

文献研究と消費者調査の結果から、店舗コンセプトと顧客価値水準の一致を見出すことができ、商業中心型小売業が日本で成功するためには、@扱っている商品のニーズと売れ方がホームカントリーと日本で似通っていること・Aその商品を調達するためのグローバル取引関係をすでに築いていること・B店舗コンセプトが日本の消費者に受け入れられることという3つの要因を結論として導き出した。

この3つの要因から、今後日本に参入を予定している商業中心型の外資系小売業に対して提言を行った。その提言は、外資系小売業が日本に参入するにあたり、その3つの要因をどのように判断基準として考えるか、そしてその3つの要因が日本参入時の参入モードの意思決定にどのように影響を与えるかを説明したものである。

最後に、本論分の限界として述べたのは商品依存的な結論を打ち破る例として、インターネットによる本の販売などが今後の研究対象として興味深い点と、今後の研究課題として特に国際比較やAVソフト店でのアンケート分析という具体的な提案を行った。