清涼飲料業界の自販機マーケティング戦略
− データマイニングを活用して −


M24 坂井 憲治

 


 清涼飲料業界において自販機は最も重要なチャネルの1つであるが、ここ数年普及台数も頭打ちとなり、1台あたりの売上金額も減少傾向にある。

 清涼飲料メーカーは、成長過程においてフルライン製品戦略をとり、自販機をメーカー主導流通システムとして作り上げてきた。しかし、コーヒーから無糖茶、缶からペットボトルといった消費者の嗜好や飲用シーンの変化が進み、店舗選択も自販機からコンビニエンス・ストアへとシフトしつつある。そして、その影響はメーカー間の競争へと発展し、メーカーのフルライン製品戦略を困難にし、自販機チャネルをオープン化へと向かわせている。しかし、これまで築き上げた流通システムを簡単に捨てることは出来ない。

 今後の清涼飲料メーカーの課題は、「飲用シーンや競争といった状況要因を踏まえた品揃えを行い、消費者にとって自販機の魅力度を向上させる」ということになる。すなわち、広く消費者のニーズに対応するコンビニエンス・ストアに対し、自販機チャネルでは消費者個別のニーズに対応するために、「消費者の選好や状況要因によるセグメンテーションを行うことと、そのセグメンテーションごとの品揃えを行う」ということになる。

 本研究は、この清涼飲料メーカーの課題に対して、探索的なアプローチであるクラスタ分析、アソシエーション・ルールの導出といった手法を中心としたデータマイングを活用して分析を進めてきた。分析の結果、課題に対して次の2つの結論が導かれた。

1.「消費者は自販機による清涼飲料の購買に一定のパターンを持っており、ある程度特定化された消費者が購買している自販機をクラスタリングすることにより、その購買パターンによるセグメンテーションが可能となる。」

2.「アソシエーション・ルールはより詳細なレベルで消費者の購買パターンを把握し、品揃え形成に有効な解を与える。更にそれは、クラスタリングによるセグメンテーションごとに行うとによりその有効性を向上させる。」

 最後に、データマイニングを活用した今後のマーケティング戦略について、3つの提案を行った。1つ目が、データマイニング・プロセスのルーチン化と分析と実行による組織学習のシステム化である。2つ目が、変化のウォッチングとアドホックな分析と意思決定についてである。そして3つ目が、今後のITの進化の可能性を予測したデータベース設計についてである。