街づくりのマーケティング
−駅空間づくりに着目して−


M25 浦野寛子

 


 東京都の場合、鉄道が都市に先行して作られた後に、その駅周辺に市街地が形成されていくという関係が極めて一般的であったため、地図をみても街の中心に鉄道駅があることが比較的多い。つまり、商業機能を中心とする都市機能がおのずから鉄道駅周辺に集まるという強い経済的動因を帯びているのである。このため、駅そのもの自体の商業的ポテンシャルは、駅利用の人の多さから考えても、非常に高い状況にあるといえる。またこうしたところから、駅による街づくりへの影響も大きいということがいえる。

 今までは、鉄道会社にとってはリンク機能(輸送事業)のほうがノード機能(駅における小売事業)より上位機能に位置しているという発想が根強く残っていたために、駅における商業政策は重視されてこなかった。しかし、将来輸送人員の低下が確実に見込まれることから近年では、駅における小売事業に注目しはじめている。

また地域にとってみても、「駅」が活性化することは望ましいと考えている。駅はその地域を象徴する顔である。いまや地域間格差が広がりつつあるといわれているが、地域社会の中核をなる駅の変貌がこれから大いに刺激となって、新たな活性化の動きに結びついていくことが期待される。

 このような観点から、問題設定を「駅における小売業に注目した駅のあり方とは?」とし、「駅の特性に応じた扱う商品・カテゴリー」、「駅・街特性をふまえた構成店舗・テナントミックスのあり方」を、商業集積の階層と類型や消費者買物行動の理論をもとに考えた。