「MROにおけるPB戦略の有効性」
―データマイニングによる顧客志向型PB商品の模索


M25 酒川美代子

 


  昨今、わが国では経済の長期不況による景気の冷え込みや物価下落傾向から、消費者は価格に対したいへん敏感になってきている。しかしながら、消費者は今までのように価格だけが安ければいいのではなく、各々の価格に見合った適切な商品やサービスの価値、バリュー・フォー・マネーを期待するようになってきていると考える。

そのような中、わが国の多くの小売は自社ブランドのプライベート・ブランド(以下PBと記す)の育成・強化に力を入れている。もともとPB商品は、ナショナル・ブランド(以下NBと記す)とは異なり小売業が価格主導権を持ち、低価格で商品を販売でき価格競争力をつけることができる。それは低価格を実現しても、PB商品はNB商品よりも粗利率が高いように作ることが可能なためである。このように小売業にとってより収益性が高いことが小売業の積極的なPB展開を促進させる大きな理由のひとつである。

一方、価格対価値のニーズが高まるにつれ、一部の小売業では、価格対応だけでなく、他社との差別化をはかる目的で、積極的にPB展開に取り組み始めている。今後のPBのあり方の1つとして、価格競争力をつける価格対応品だけではなく、価格だけではない、より高い価値をもったPB商品の開発・提供が、小売業の差別化=オリジナリティーを生み出し消費者の継続的な購買であるストア・ロイヤリティーの向上へとつながっていくのではないかと考える。
以上は、一般の消費者だけでなく、情報技術不況や国際的なデフレ圧力等により収益を悪化させた多くの企業においても、今まで以上の経費削減や仕事の効率向上が求められているため、事業所向けの商品購買にも一般消費者と同様の傾向があるものと考える。

本研究の問題意識の原点は、小売業が「売りたいもの」と、顧客が求める「買いたいもの」とは必ずしもイコールではなく、小売サイドの収益性拡大と顧客が求める商品の組み合わせとの最適なバランスのとり方についてである。さらに、問題意識として、小売業は、ストアロイヤリティーを向上させること、すなわち店への好感を持ちながら継続購買をする顧客を獲得し維持することが大切であること。そのためにはトラフィックビルダーとしての役割をもつPB展開が必要ではないかと考える。

本研究では、MRO(Maintenance,Repair and Operation)であるオフィス用品通信販売の顧客購買履歴をデータマイニングを使って分析し、消費者購買行動に継続的に影響を与える効果的なPB戦略のあり方を考えていくことにする。具体的には、従来の価格対応型PBと付加価値訴求型PBの代表的な商品を取り上げ、購入者の購買行動の違いから今後の有効なPB展開の方向性を導き出していくものとする。