低関与商品に対する消費者の態度と行動に関する一考察
― 非耐久消費財メーカーの流通販促費削減の実施条件 ―


M25 松尾 大

 


 1980年代から1990年代にかけて、多くの非耐久消費財メーカーのプロモーション戦略はマス広告から店頭マーケティングへとその重点をシフトしてきた。そして、現在では、多くの非耐久消費財メーカーが店頭マーケティングを重視するあまり、その収益性を低下させているという問題に直面している。
このような問題を解決するために、私は「非耐久消費財メーカーが流通販促費を削減するためには、商品レベルでどのような条件が必要とされるのであろうか。」という疑問点を明らかにしていくことを本論文の目的とした。

本論文では、上記の疑問点を明らかにする前に、
  ・ 非耐久消費財メーカーの流通販促費が膨張してきた理由。
  ・ 非耐久消費財メーカーがおこなってきた取引制度と流通販促費の関係。
  ・ 非耐久消費財メーカーの流通販促費の投下と小売店頭における商品の取り扱いの関係。
を整理している。

これらを踏まえたうえで、企業として流通販促費の削減に取り組む「カゴメ」の商品や少ない流通販促費の投下でも高いシェアを維持している「日本ハム」や「P&G」の商品を対象として事例研究を実施した(これら企業の商品を分析の対象とした理由は、上記の疑問点を解決するための手掛かりになると考えたためである。)。

そして、消費者が一般に低関与と呼ばれるような非耐久消費財の購買をおこなう際に、「『ブランド』『品質』『価格』を判断基準とする。」という視点から事例分析をおこなった結果、非耐久消費財メーカーが流通販促費の削減を実現するためには、
  ・ 消費者が特定カテゴリーの商品間に効用の差を感じている。
  ・ 消費者にとって意味のある「品質の差」が小さい。
  ・ 消費者が特定カテゴリーの商品間の「品質の差」を認識できない。
  ・ 消費者にとってブランドが「信頼の印」もしくは「意味」としての役割を有しており、それが競合品よりも相対的に強く働いている。
といった4つの条件を商品が備えている必要があることを明らかにした。

残された課題として、消費者が購買の時に求める品質と消費者が当該品や競合品に抱いているブランドの役割とその強さに関して、定量的な調査を実施する必要がある。そして、その調査結果をもとにすれば、非耐久消費財メーカーは、流通販促費の削減を実行することができるであろう。