「デジタル家電分野における商品企画プロセスと
マーケティング戦略に関する一考察」
― カーナビゲーション市場を事例に ―

 

M26 勝手 啓文

 


 前職の輸送機器メーカーにおいて主に商品企画の職務に携わった経験から、私は製造業における商品企画業務について、その重要性について目の当たりにした。それは、ある商品が上市する際、その商品の市場においての成功・失敗の要因のほとんどは、商品の企画段階で決定付けられていると感じたからである。
 特に輸送機器メーカーでは環境対応のエンジン・動力開発などの先行研究や、製品の試作自体に巨額の投資が必要とされ、開発の後戻りは損失として大きい。またエレクトロニクスなど技術変化の早い業界では、プロダクトライフサイクルがますます短期化しているなかで、いかに新商品のヒット率を向上させるかは、企業にとって重要な課題であるといえよう。

本研究ではこのような問題意識のもと、現在急速に伸びつつカーナビゲーション市場に着目した。道路が複雑であるなど日本にはカーナビが普及した背景があるが、2003 年の国内出荷台数は、294万台であり、2003 年の日本の国内乗用車販売台数(軽自動車を含む)は446 万台と比較しても、新車の半数以上に装着されていることが推定できる。
 また、カーナビゲーションはITSやトヨタのG-Bookを代表とするテレマティクスなど車の情報化との関わりが大きく、各自動車会社ではカーナビを単なる道案内の道具から、ITS車載機器の中核と捕らえるようになってきており、新車に工場の組立ラインやディーラーで装着される、純正比率が4割にまで高まっている。

このように急激に市場が変化しつつある業界の競争構造をポーターの戦略グループを分析のフレームワークを用い整理して、そのなかで特にパフォーマンスの高い2つのタイプの異なる会社、パイオニアと松下電器産業を取り上げ事例研究の対象とした。
 2社は、OEMと市販品という全く異なる市場を中心に、相対する戦略をとりながら成長してきており、分析対象として興味深い。
 各メーカーがなぜそのような高いパフォーマンスを達成できるのかについて、消費者、財の特性とも合わせつつ、特に商品企画プロセスとマーケティング戦略に焦点を当て、その成功要因を明らかにする。また、その成功要因が有効となる条件についても同時に解明していく。