郊外型百貨店の存在意義
−消費者の店舗選好・選択行動を中心に−
M27 細井良太郎
郊外百貨店は現状明らかに苦戦している。日本経済の低迷による家計消費支出の抑制が影響していることに加え、規制緩和による他業態の新興、消費者の志向・態度の多様化、情報技術の活用による消費者と小売業との情報の非対称性が弱まったことも大きく影響を与えていると考えている。
多様化した消費者に百貨店も近年さまざまな手法を採ってきた。ニュータウンブームに代表される人口の郊外化に合わせるように80〜90年代に百貨店業は出店を郊外にシフトさせてきた。そして近年小売業態は商業人口の多い、都心へ投資を再度集中させたというのが最近の大きな流れである。
それでは経営資源のある程度の規模を占める郊外型百貨店に対して、百貨店業は今後どのように存在させていくか必要があるのだろうか?これが本研究の問題意識である。
調査手法として、都心から電車で1時間弱といういわゆる郊外の立川地域、浦和地域を選択し、ポスティングによる世帯への配布と、郵送による質問表の回収を行った。
結論としては、まず百貨店に対する重視項目が5つに要約されることが判明した。施設重視、ファッション性重視、価格重視、サービス性重視、食料品重視に要約された。また対象である郊外型百貨店については、都心型百貨店と異なり、消費者の考える重視項目にはっきりとした傾向が現れることが分かった。
郊外型百貨店に対し、消費金額が高い人ほどファッション性を重視する傾向にあり、それが年収に対し高い割合で消費する人ほどサービス性を重視する傾向が認められた。また出向頻度が高い人ほど、食料品を重視する傾向が認められ、情報探索意欲が高い人ほど施設を重視する傾向を認めることが出来た。このことは消費者が自らの価値基準で店舗選好・選択により消費を繰り返す中で、郊外型百貨店に対する重視項目が変遷していることを示していると考える。これが郊外型百貨店に対する重視項目を検定・分析した結果得られた結論である。
また重視項目の因子得点を用い、クラスター分析を行い、郊外消費者の特徴を掴み、関与の高低や購買に対する態度から4つのクラスターに分けることが出来た。
最終的には提言として、年収に対して消費金額の高いロイヤルティ顧客を増やすべく、メインターゲットにどのクラスターを設定するべきかにも触れ、今後の郊外型百貨店のポジショニングを踏まえた提言で本研究を結んでいる。