食品カテゴリーにおける「ネット通販」と「店舗販売」との間での
情報源選択と購買場所選択について

 

M28 上田 奈穂子

 


 インターネットに代表されるデジタル情報技術の発展により、個人や家庭へのデジタル通信端末が急速な勢いで普及している。この動向は、インターネットを利用した通信販売(以下ネット通販)の成長を後押しする要因であることは言うまでもない。
 しかしネット通販で取引される商品カテゴリーを見ると、日常食、とりわけ生鮮食品はネット通販には向かない、という通念が広く流布している。なぜならば、生鮮食品には、人間の五感(臭覚、視角、味覚、聴覚、触覚)を使い、現物を持って品質や商品を判断する、という購買選好が存在するからである。とりわけ日本人にはその傾向が強い。
 したがって本論文は、生鮮食品に注目し、ネット通販に向く商品とはどういった特性を持つのかについて、仮説実証型分析を施し、どのような消費者の属性がネット通販での購買選好を規定するのかを探索発見型分析により明らかにした。そしてさらに、特定の商品特性と特定の消費者特性の結合が、ネット通販での購買選好にどのように影響するのかを明らかにした。
 結果についてはまず、商品特性としては、消費者はバラツキの大きな商品を購買するときほど、ネット通販での購買を選好せず、商品の標準化度が高ければ、ネット通販での購買を選好するということが判明した。
さらに、腐りやすい商品、取り扱いの難しい商品を購買するときほど、ネット通販での購買を選好しない。
 次に、消費者特性としては、以下の2点が導かれた。
@ ネット通販経験が長くなるほど、消費者はネット通販での購買を選好する。
A 消費者が商品の産地や生産者について気にする(以下「生産者ブランド志向」が高い)時ほど、ネット通販での購買選好は低くなる。
 加えて、商品特性と消費者特性との交互作用効果としては、
@ 商品特性である「標準化の低さ(バラツキの大きさ)」と、消費者特性である「ネット通販経験」の長さが結合すれば、ネット通販での購買選好は高まる。すなわち、ネット通販歴が長くなるほど、商品において必要とされる標準化度は低下する。
A 商品特性である「標準化の低さ(バラツキの大きさ)」と、消費者特性における「生産者ブランド志向」の高さが結合すれば、ネット通販での購買選好は高まる。すなわち、生産者ブランドを気にすればするほど、必要とされる標準化の程度はさらに低下する。
以上のように、未だ実証研究の乏しい領域において、非常に興味深く、今後、ネット通販事業を展開する事業者にとって大いに意義のある結果を得ることができた。