健康食品の消費者行動
M28 加藤 博文
近年の健康食品市場は右肩上がりに成長を続け、2006年には約2兆円の規模といわれており、その中でも特定保健用食品(通称トクホ)市場は成長著しい。公衆衛生の改善や医療の質的向上による人口高齢化の進展、それに伴う疾病構造の変化、感染症による死亡率の低下や死亡原因において生活習慣病(糖尿病、高血圧症、高脂血症、脳卒中、心臓病)が増加傾向にあることを背景に消費者の健康に対する意識の向上という変化が当該市場を牽引していると考えられる。その変化に対応するように国家の取り組みとしても2002年の健康増進法の制定、医療費の高騰を抑制することを目的としたセルフメディケーションの促進等が行われている。加えて、インターネットの普及が消費者の保有情報量の増大や電子商取引金額の増大を招いており、消費環境は著しく変化している。このような環境の中、企業は当該市場に対して業界を越えて顧客の獲得に乗り出し、その競争は激化の一途を辿っており、各社は自社製品の特徴を消費者に訴えるべく新しい素材の探求に余念がない。しかしながら、健康食品は実際に使用しても品質の違いがわからない信用財としての側面が強く、製品特徴の訴求が困難を極める。この点からも競争激しい当該市場に対して、企業がいち早く顧客を獲得する為の課題の一つには、消費者が行動レベルで製品購入に至るまでの態度レベルでどの製品情報を重視しているのかを含めた購買プロセスを知り、即座に対応していくことが挙げられる。如何に素晴らしい素材を探し出したとしても、品質がわからない分、顧客獲得に効果的な訴求点を知る意義は大きい。
本論文では、健康食品に携わる企業のマーケティング担当者に対して、どのような消費者がどのような製品情報を重視するのか、そしてどのような製品情報を重視する消費者がどのような購買行動をとるのかを知ったうえで、それに対応するマーケティング戦略の立案に示唆を与えることを目的としている。調査においては年齢・性別の偏りなく広くデータを回収する為に分析対象製品をトクホの存在するカテゴリーの飲料・食品に置き、消費者調査を実施した。その際、分析モデルとして設定した、態度レベルで健康への関心、ライフスタイル、購買関与度・品質判断力の各々と重視度の関係を、そして態度レベルから行動レベルで重視度と計画購買、想起購買、衝動購買の各々の関係を分析した。
結果、健康への関心と重視度で5個、ライフスタイルと重視度で2個、購買関与度・品質判断力と重視度で14個、重視度と計画購買、想起購買、衝動購買で7個の関係を発見した。
結果を踏まえ、それらの関係の裏にある「健康への関心・不安」をキーとして、消費者の製品情報に対する重視点とその購買行動の傾向、それに対応するマーケティング戦略立案への示唆を最後の結論及び提言で述べている。