ユビキタス時代における消費者行動
−インターネット接続・パソコンおよび携帯電話による情報探索−
M28 江尻 尚平
今日、消費者社会の中で、消費者の得る情報は、インターネットの登場により、飛躍的に増えた。インターネットという、無尽蔵の情報データベースが誕生したことにより、企業は消費者が手に入れる情報を管理することができなくなってきた。消費者を理解する上で、消費者がどのように情報を取得するかを理解することが大きな課題となってきたと言える。 近年携帯電話の普及とともに、携帯電話を使ったインターネット接続による情報探索という新しいメディアが普及した。直感的にも、いつでもどこでもインターネットという無尽蔵のデータベースに接続できる環境がそろったことは、消費者の行動に大きな変化をもたらすのではないだろうかと、問題意識が浮上してくる。
消費者の情報探索行動は、消費者行動論の文脈では、購買意志決定過程における選択行動研究として、多くの研究がなされてきた。しかし、これら研究の中では、情報源として情報を伝達するメディアの選択決定過程についての研究は少ない。
本研究では、消費者の情報源としてのメディア選択行動について、購買決定過程研究および消費者の選択問題研究をベースに、選択決定過程の解明を行うことを目的とした。この目的のために、仮説および概念モデルの構築を行った。パソコン・携帯電話併用ユーザーを対象に調査を行い、パソコンインターネットとモバイルインターネットの評価および選択を相対的に比較し、実証分析を行った。
実証分析の結果から、消費者は情報源メディアを、情報量とユビキタス性という2次元で知覚し、評価を行っていることが示唆された。情報量に関する評価はパソコンインターネット選択に正、ユビキタス性に関する評価はモバイルインターネットに正の関係を持つことが示唆された。情報探索目的により、情報源メディア選択行動は異なり、事実情報探索にはパソコンインターネット、評価情報探索にはモバイルインターネットが選択される傾向があることが示唆された。また、状況要因であるユビキタス・コンテクストの影響では、状況的制限によってよりモバイルインターネットを使う人は、モバイルインターネットに対するユビキタス性評価が高いことが示唆された。情報源メディアの評価では、情報量とユビキタス性という2次元で知覚されていることがわかったが、それぞれの属性評価の重みづけは、目的によって、また、コンテンツ自体の特性と商品の特性によって、変化することが示唆された。
これら、本研究結果から、今後の企業がマーケティング・コミュニケーションを行う上での、これら情報源メディアの位置づけをどうするべきかの提言を行う。