サービス業におけるアーキテクチャー分析と市場戦略の整合性
M29 川原 慶子
わが国のサービス業、特に接客業は、往々にして世界から高品質だという評価をもらっている。日本に来た外国人が、ちょっとした買い物をしても無料で丁寧なラッピングをしてくれることに驚いたという話はよく耳にする。しかしながら、こうした「良きサービス」の生産性が低いのも事実で、欧米と比較しても明らかであった。本論文ではこの生産性の低さを、高コスト高品質を受け入れるマーケットが大きくなかったこと、効率化が進められなかったこと、サービスを提供する組織を横展開(フランチャイズ化)することが出来なかったことが原因と考える。そしてこれらは突き詰めると、ターゲティングの問題とサービスを提供する構造の問題と言い換えることができる。
サービスには、無形性、変動性、消滅性という特徴以外に不可分性という特徴がある。サービス提供者とサービスとは切り離すことができないという特徴だ。このことは、サービスの提供構造がターゲットである顧客と密接しているということを示している。製造業と異なり、サービス業は「提供構造」がマーケティングに非常に強い影響を及ぼしていると考えられる。本論文では、この「提供構造」を東京大学の藤本教授の研究している「アーキテクチャー分析」を通して、その構造と市場戦略との整合性を解明したい。そしてどのような市場環境下においてどのようなアーキテクチャーが適切なのか条件付けを行なうことを本論文の目的とする。