EMBA開講記念企画 慶應義塾大学ビジネス・スクール特別講座 第2回「グローバル・イノベーション経営の理論と実践」開催報告

7月14日(火)午後7:30から日吉キャンパス協生館5階のエグゼクティブセミナールームに参加者50名を迎え、浅川和宏教授の講演が行われました。

まず、グローバル・イノベーション経営について、「理論的背景」、「パラドックス」、「経営メカニズム」の3部構成で分析を進めることが紹介されました。

「理論的背景」では1980年代からはじまったグローバル・イノベーション理論について、主要な研究者の学説が示されました。そのうえで現地発イノベーション概念の一つである“メタナショナル・イノベーション・サイクル”の概念が提示され、世界中で優位性を確保する上で、対外的知識・情報ブローカーの活躍と、世界各地に分散する知的資源を社内で結合する対内的知識・情報ブローカーの社内ネットワークの活性化・流動化の重要性が説明され、資生堂が学習蓄積を機軸としてフランスで展開した香水ビジネス、Tata Communicationsの“持たざる者の強味”を活かした急速なグローバル・イノベーション展開、ST Microelectronics、Nokia、Nestle、IBMなどの実例が紹介されました。

次に「パラドックス」として、グローバル・イノベーションについて、組織内で往々にして発生する“総論賛成、各論反対”に関して、“何故このようなことが起きるのか”、“グローバル・イノベーションに対する真の障害とは何か”参加者から多くの意見が出されたうえで、さまざまな理論的枠組みを使って“現地の自律性vs.本社との戦略的統合”、“海外ナレッジの吸収能力vs.モティベーション”、“海外パートナーの魅力vs.関心”、“市場の実績vs.将来性”など、グローバル・イノベーション推進上の様々なパラドックスについて説明がなされました。

3つめに「経営メカニズム」としてグローバル・イノベーションについて“滞在型”、“訪問型”、“招聘型”の3つのアプローチが提示されました。“滞在型”の実例としてTata, HP,ローランド、資生堂、無印良品、総合商社、ユニチャームなどのそれぞれ特色ある例が紹介されました。“訪問型”はSnecmaの例などに加え、ベスト・プラクティスの世界的共有や横展開の重要性の観点から、コンサルタント業や会計業務などのプロフェッショナル・ファームによるグローバルな知識共有に適していることが指摘されました。“招聘型”ではP&Gやノキア、それにTesla Motorsの例が紹介され、大企業に限らず新興企業でも“注目と開示”のアプローチを取れば有効であることが示されました。更に、そうした経営メカニズムの理論的根拠にも言及したうえで、それらのアプローチがいかなる条件のもとで有効に機能するかに関する整理も行われました。

最後にグローバル・イノベーションの全社的方向性(ドミナント・ロジック)と、それに沿ったインセンティブが組織内部に徹底されることの重要性が指摘され、GEのウェルチ前会長が実行したインドにおける研究開発推進の例が説明されました。

質疑応答では、参加者から自身の所属する組織における問題点に関する発言・質問や、 浅川教授が取り上げた実例に関する補足コメントが出るなど、活発な議論が行われました。

参加者の声

  • グローバル・イノベーションには、国籍概念を超えた企画力、インフラ、人的交流が必須であると思いました。「グローバルR&D マネジメント」を事前に読んで勉強しておいて良かったと思いました。本当に有意義な講座をありがとうございました。
    (業種:機械/役職:課長)
  • 勤務先が外資に買収されることになっており、商品企画を担当している中で今後大きな変化があると予想されるので、その中で考える参考になったと思う。相手方の研究をした上で、どういう対応や提案をしたら良いか、経営メカニズムでの解説にはヒントが色々あった。また、情報ブローカーとしての役目、相手方との接点になることを考えてみたいと思いました。
    (業種:電気機器)
  • 多国籍企業の現地(日本)法人に勤める身として、Regional HQの考え方や本国⇔現地のイノベーションに対する考え方など、視座の整理をすることができた。私個人は日本人なので、1人の日本人としてどのようにこの問題に向き合っていくのが良いか、継続的に考えていきたいと思う。
    (業種:科学)
  • 私の現在の業務では、グローバル・イノベーションに直接関わるものがありませんが、グローバルのみならずローカルな現場に置き換えても当てはまるものが多く、参考になりました。
    (業種:陸運業/役職:課長補佐)

開催概要

名称 2015年度KBS特別講座 ―EMBA開講記念企画― 第2回「グローバル・イノベーション経営の理論と実践」(浅川 和宏教授)
日時 2015年7月14日(火)19:30~21:30(19:00開場)
会場 慶應義塾大学 日吉キャンパス 協生館5階エグゼクティブセミナールーム
会場アクセス
参加費 無料
定員 50名(抽選)

担当講師

浅川 和宏
教授 / 三菱チェアシップ基金教授

早稲田大学政治経済学部政治学科卒、(株)日本興業銀行勤務を経て、1991年 Harvard Business School(ハーバード大学ビジネススクール)修了、MBA(経営学修士)取得。その後フランスに渡り、INSEAD (インシアード経営大学院、(Fontainebleau, France) より 1993年に M.Sc.(経営科学修士)、続いて博士課程を修了し、1996年に Ph.D.(経営学博士)の学位を授与される。1995年慶應義塾大学大学院経営管理研究科準専任講師。1997年助教授。2004年教授。現在は三菱チェ アシップ基金教授に就任。2015年、アメリカに拠点を置く世界最大の国際経営学の学会であるAcademy of International Business (AIB) (アメリカ国際経営学会)より、AIB Fellow(フェロー)に選出される。

プロフィール詳細

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