10月24日(月)、BMW GroupTokyo Bayにて、BMW Group Japan との共催でKBS特別講座が開催されました。
今年創立100周年を迎えたBMW グループの中にあって、BMW JapanがNext 100 years の歴史を創るためにInternationalization 特に“Change”(変革)あるいは ”Challenge” に向けてどの様な取り組みをしているのかを、BMW Japan のCEO/President である Peter Kronschnabl氏がまず講演し、次に岡田教授によるKBSが取り組むグローバライゼーションの活動、グローバルリーダーを育成していく活動が紹介されました。そして最後に“ Change” & “ Internationalization” をキーワードとして、講演者によるパネルディスカッションが実施されました。
また、今回は講演後にアフターパーティーも行われ、盛況の中、本特別講座を終えることができました。
Kronschnabl氏の講演
アフリカ、インド、ロシア、ベルギー、日本と幾つもの異文化(国家、地域)の中で経営を経験されたKronschnabl氏は、各国で直面する困難さに対して、“忍耐”、“興味”、“尊敬”を持って異文化を理解する能力が重要だと考えています。自分の知らない異文化は良い悪いではなく、好きであっても嫌いであっても観察し、傾聴し、分析することが必要で、この能力がグローバル化に繋がると説明されました。
そして、次にコミュニケーション能力が重要です。世界中で最も多くの人が話す言語は中国語ですが、重要なのは最も学ばれている言語です。英語は全世界で15億人以上が学び世界共通言語になっています。BMW Japanも昨年、社内言語を英語にしました。しばしば、日本人はコミュニケーションが下手だと言われますが、その理由は英語力ではないと思います。日本人は他人を尊重し礼儀正しく良く働きますが、自分の意見を持っていないケースも見られます。自分の意見の発信無くしてグローバル企業のリーダーにはなることはできません。
1970年代に日本企業は世界の舞台で活躍しましたが、現在世界の競争に勝っているとは言えません。日本企業がグローバル化して行く中で、日本人が持っている日本発のイノベーションはたくさんあります。例はSONYのディスクマンです。完璧に技術で世界をリードしていました。我々は日本に開発拠点を置いており、毎月研究内容を発表させています。日本から素晴らしい技術的発信がある一方で、素晴らしい技術を利用した製品はなかなかマーケットに現れて来ません。素晴らしい技術力があるのに、それを企業が認めない、あるいは何か企業内のプロセスの中で消えてしまうのではないのでしょうか?日本人は行動を起こす前に間違わないように確認をし、調整をするので時間がかかります。日本人は完璧な結果を求めるので、トップ品質のものは日本から来ますが、90%の出来でもよいのではないでしょうか。日本人は間違いを指摘されることを嫌いますが、間違いを通してお互いに学びあうことが大切だと思っています。
岡田教授の講演
岡田教授は Emerging Market(新興国市場)を研究分野とし、アフリカ諸国、アジア諸国におけるビジネスの研究を通して、KBSが取組むグローバルリーダーの育成を推進しています。今回、中国の精華大学、韓国のKAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)との共同研究において、アジアの代表的な企業(トヨタ、三菱商事、鴻海、三星、LGなど)と欧米企業の比較分析の結果、アジア企業はグループ主体で長期的な行動様式を取る一方、欧米企業は個人主義で短期的であると説明しました。そして成功する企業はWestern スタイルとEastern スタイルの両方を上手く使い分けていると説明しました。このような研究の一例を紹介した後に、BMWで実践されている異文化圏での社員のマネージメント、グローバル経営戦略、社会的貢献と企業の利益追求の両立、そして日本企業がグローバル化して行くうえで日本が持つ強み(力)は何かを、パネルディスカッションのテーマとして挙げました。
河野委員長ラップアップ
グローバルリーダーにとって必要なのは英語力ではなくて、グローバル化に対する考え方、グローバルに出て行こうとか日本を変えて行こうというマインドセットを持つことが大切です。コミュニケーションをとる上ではコンテンツが無くては全く意味が無く、伝えるべきコンテンツをもっているかどうかが語学力よりも大切です。
我々がBMWと共同のセッションを行なう大きな理由は、これからの経営者教育、ビジネスリーダー教育を変えて行きたいということです。ただし、グローバル化と言うと語学の問題を含めて、日本を後ろ向きに批判する論理が多く聞かれます。しかし、日本は駄目だと悲観的になり過ぎるのは適切ではありません。例えば、品質へのこだわり、年配者への配慮、時間へのこだわりなど、日本人の素晴らしさはたくさんありますが、それを世界に向けて発信していないことが問題です。
最後のポイントは、グローバル化を進めていくことは、実は社会の経済格差や教育格差といった地球環境に関わる問題を考えることと密接な関係があるということです。グローバルに考えるということは、日本とは全く違う経営環境に関心を持つことを意味しています。グローバルに考える視点は、世界の中での様々な経営環境の違いを認識し、その違いをどう乗り越えていくかを考えることに直結しています。日本がグローバル化を進めていくということは、そうした違いに日本の企業社会がどう対応していくかを考え、その姿勢を世界に発信していくことに他なりません。
KBSは、そうした企業社会の変革に向けて自らも変革を進めていきますので、引き続きサポートを宜しくお願い致します。
開催情報
開催日時 | 2016年10月24日(月)19:00-21:00 |
---|---|
会場 | BMW Group Tokyo Bay 会場アクセス |
定員 | 200名 |
言語 | 英語(通訳サポートあり) |
参加費 | 無料 |
登壇者

河野宏和
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 委員長
1980年慶應義塾大学工学部管理工学科卒業、同大学大学院工学研究科修士課程・博士課程を経て、1991年工学博士(慶應義塾大学)取得。慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、助教授を経て、1998年より教授。2009年10月より、慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。

Peter Kronschnabl氏
BMW Group Japan代表取締役社長
1995 年 ドイツBMW 本社セールス&マーケティング 国際マネージメント研修制度に
参加。
1996 年 アフリカおよびカリブ地域 商品・価格担当マネージャー就任。
1998 年 アフリカおよびカリブ地域 エリア・マネージャー就任。
2002 年 アジア、太平洋、アフリカ、東欧地域 市場開拓担当部長就任。
2006 年 BMW インド 代表取締役社長就任。
2010 年 BMW グループ・ロシア 代表取締役社長就任。
2012 年 BMW グループ・ベルギー 代表取締役社長就任。
2014 年 ビー・エム・ダブリュー株式会社 代表取締役社長就任。

岡田正大
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
1985年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。(株)本田技研工業を経て、1993年修士(経営学)(慶應義塾大学)取得。Arthur D. Little(Japan)を経て、米国Muse Associates社フェロー。1999年Ph.D.(経営学、オハイオ州立大学)取得。慶應義塾大学大学院経営管理研究科専任講師、助教授、准教授を経て現在教授。
お問い合わせ
慶應義塾大学ビジネス・スクール イベント運営事務局
E-mail: event@kbs.keio.ac.jp