KBS Report_22_デジパン用
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KBS REPORT Vol. 22Profileのブログ投稿数が売上予測に有効であることが実証されました。特に、従来のテレビ広告が間接的に売上に与えるシナジーを考慮することによって、広告効果を最大化できることを示しました。さらに別の研究では、消費者がどのようにして新商品の情報を獲得するのか、その学習プロセスを検証しました。消費者は、企業が発信するテレビCMやPRによる直接的な情報だけではなく、消費者間のコミュニティでの情報交換によっても製品情報を学習しています。この研究では消費者間のインタラクションによる学習を社会的学習として数理モデル化して分析を行いました。具体的には、ビデオゲーム市場における新製品(WiiとPS3)の購買行動を分析し、企業の広告出稿計画を最適化して製品の市場シェア拡大に寄与することを示しました。 近年は、AIやWeb3などデジタル技術の進化に伴う消費者の反応に関する研究を行っています。上記のような消費者間のインタラクションを、図1の大西 浩志准教授 ONISHI, HiroshiREPORTProfessorsKBS1996年大阪大学経済学部卒業。同大経済学研究科博士前期課程修了(修士[経済学])、株式会社ビデオリサーチを経て、2011年ミシガン大学ロス・スクール・オブ・ビジネス博士課程修了。Ph.D.(経営管理学)。株式会社電通チーフ・アナリスト、東京理科大学経営学部准教授、中央大学戦略経営研究科准教授を経て、2024年より現職。10│ 2024年4月よりKBSに着任いたしました、大西浩志と申します。私は、これまでマーケティング領域における研究・教育活動だけではなく、メディア業界において実務経験も積んできました。私が社会人になった当時は、ちょうどオンライン広告やSNSなどのデジタル・ツールを活用した広告やコミュニケーションが普及していく時期と重なり、必然的に私の興味・関心はデジタルマーケティングの領域、特に、テレビCMなどの企業の伝統的な広告・宣伝手法と新しいデジタルメディアをどのように融合させるとコミュニケーション効果を高められるかということに向かいました。現在では、この興味・関心の延長線上でAIやWeb3などの最新のデジタル技術が企業や消費者の意思決定にどのように影響するかの解明に取り組んでいます。 また、私の専門領域は「マーケティング・サイエンス」と呼ばれており、戦略・消費者行動論と並ぶマーケティングの3本柱のひとつとなっています。マーケティング・サイエンスは、「サイエンス(科学)の視点からマーケティング(消費者を理解し、企業などが消費者に働きかける活動)にアプローチする」研究です。今では、上述のオンライン技術やモバイル、IoTの発展により、リアルタイムに大量の消費者データ(購買データ、SNSデータ、レビュー・口コミデータなど)が収集できるようになっています。これらのビッグデータを実証的に分析し、消費者の行動パターンを洗い出し、企業などのマーケティング活動に処方箋を提示するのが研究の役割です。既存メディアとデジタルメディアのシナジー:消費者の反応とインタラクション 私の初期の研究では、新商品のデジタルメディア(ブログ)と売上の関係性に焦点を当てました。この研究での発見は、新商品ローンチ前にテレビ広告を出稿することによって、その商品に関するブログの投稿が誘発され、そデジタルからアートまで:新時代のマーケティング探求

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