KBS Report_22_デジパン用
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KBS REPORT Vol. 22│11図1 消費者間インタラクションのタイプと代表的なプラットフォーム図2 AIが介在(分断)する消費者と企業の意思決定パラダイム図3 『アート・イン・ビジネス』アートがビジネスに与える影響ように情報フローとモノ・サービスのフローのどちらを扱うかで大別し、さらにコンソーシャリティ(インタラクションの同時性)の高低も加味して4つに整理しています。ここでは、新たな消費者行動であるシェアエコノミーが与える影響についても分析しました。この成果は、マーケティング分野における新しい理論的枠組みを提供し、今後の研究や実務においても応用可能な示唆を含んでいます。AIが消費者と企業の関係性を分断する危惧 近年の生成AIの発展は顕著で、企業での消費者に対する問合せ対応やョンの多くが自動化されています。消費者側でもSiriやGeminiなどAIアシスタントの利用が拡大してきており、下図2のようにAIが消費者と企業の間に介在し、直接的な関係が減少していく傾向が予想されています。これまでのマーケティングが扱ってきたフレームワークは、消費者と企業が直接的に(場合によっては、流通やメや業務効率化のためAIを導入しますが、場合によっては企業が意図しないようなAIによる非人間な対応で顧客対応に問題が発生する可能性があります。私の近年の研究では、AIアシスタントの見た目や話し方などの反応を擬人化することによって、消費者のAIへの忌避感などの反応をどの程度抑えることができるかを扱っています。既存のマーケティング研究で提案されている期待不一致理論(ロボットなどの非人間的な見た目で事前期待値を下げておき、人間的な情緒のある対応によるギャップで満足度が高まる)は、私の研究では短期的には効果がみられましたが、長期的には効果が減衰することが示されました。企業が消費者対応にAIを活用する場合には、この効果の減衰を考慮して、定期的に新しい見た目や対応にアップデートしていく必要性があります。今後の展望とアートマーケティング 実は、私は学生時代から現代アートに興味を持ち、国内ディアなどの仲介者を通じて)関係性を構築することを想定していましたが、AIは様々な効率性を高める反面で、両者の間を媒介して直接的な関係性を分断するような危惧があります。例えば、企業は顧客対応のカスタマイズDM送付などマーケティング・アクシ外の美術館や芸術祭に参加したり、若手アーティストの作品を中心にコレクションもしています。そこでアートマーケティング分野でも、日本マーケティング学会にて研究グループを立ち上げ、(1)企業活動にアートを取り入れビジネスや社会に貢献するための理論的・実践的な方法論を開発する、(2)日本のアート市場を拡大し、アート団体やアーティストの活動を支援するため実践的なアートマーケティング手法を開発するという目的で研究活動を行っています。例えば、アートを企業のビジネスに効果的に導入する方法論を『アート・イン・ビジネス』(図3)というフレームワークにして、アートが企業のブランドイメージや組織活性化に与える影響を分析し、企業がアートを活用してイノベーションを促進する具体的な方法を提案しています。 今後は、AIやデータサイエンスを活用したマーケティングの研究をさらに深化させるとともに、アートやデザイン思考を取り入れた新しいマーケティング手法の開発に注力していきたいと考えています。また、これまでの実務経験を基に、企業や社会に対して実践的なソリューションを提案し、学術研究と社会の両方に貢献することを目指しています。

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