KBS Report_22_デジパン用
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MBA医療業界でも組織マネジメント力や経営管理能力の向上が以前に増して求められるようになった。医師として、医療の現場の勤務を通じて体感した課題を解決するため、MBAに寄せる期待について、島村亮助君にインタビューを行った。──島村さんは救急医を経て、次のステップがMBAになりましたがMBA取得を目指されたきっかけを教えてください。 大学卒業後、市中の急性期病院や大学病院で働いてきました。働く中で気になったのは、医療従事者の職場に対する満足度が低いのではないかということです。実際に若手でも労働時間や労働環境、賃金などを理由に離職・転職する話はよく耳にします。プロフェッショナリズムに基づき、患者さんを助けることにモチベーションを感じている医療者は多いと思います。となると医療制度もさることながら、医療者がいかにして高い満足度を維持しつつ働くか、どうすればもっと良い組織になるかといった運営に対する意識に課題があるのではないかと思いました。一臨床医ではなく外部から医療現場を俯瞰するためにまず組織マネジメントや病院を運営する経営者としての意2018年山口大学医学部卒業。初期臨床研修を経て、都内の大学病院救命救急センタKBS REPORT Vol. 22ーに救急科専攻医として勤務。救急科専門医取得後、2024年4月よりKBSへ入学。2│思決定の観点を学びたいと思いMBA進学を決めました。──なぜ慶應義塾大学ビジネス・スクール(KBS)を選んだのですか? KBSは伝統的にヘルスケア領域に実績を持ち、医師を始めとする医療資格を持った多くの修了生を継続的に輩出しています。川上の医療政策から川下の現場、関連するヘルスケア産業など広範囲にわたり学ぶことができます。さらに医療に限らず様々な分野の人と関わり学びを深められることは医療系に特化したMBAプログラムにはない魅力です。こうした特徴からKBSを選びました。──そもそもどうして救急医を目指すようになったのでしょうか? 初期臨床研修医として働いていたとき、入院患者さんの急変対応をする場面で力不足を痛感することがありました。救急医は外来入院問わず目の前の具合の悪い人に適切に対応し判断するのが仕事です。医師であるからにはいつどんな状況でも対応できる力を身に着けたいと思い救急科を志しました。救急科はその特性上、医療現場の中でも社会問題が色濃く反映される診療科の一つで、「外の世界と繋がっている感じ」が面白いです。──学校生活についてお聞きします。1学期の授業やケースを通して、何か新しい発見はありましたか?大林厚臣教授の経営科学の「八甲田山雪中行軍」のケースが印象的です。「八甲田山雪中行軍」は、危機管理の意──思決定に関するケースで、冬の山中行軍の課題を事前に把握をするために、危険な環境の冬の山中で十数個の調査を行う、という内容でしたね。 はい。医学部を出て医療現場で働いてきた自分にとっては、できる限り人的被害を少なくするという意識が根底にありました。そのため、必ず達成しなければならない目標のために敢えてリスクを負わなければならないこともあるという考え方が新鮮でした。経営の場面でも複数の管理目標の中で、ある程度の資源を犠牲にしてでも最低限達成しなければならないものがあると思います。今まで同業者との議論では発見できなかった自分の考え方の癖に気づかされました。──八甲田山のケースでは、リーダーは人命救助以外の目的もコントロールする必要がありました。リーダーの資源配分のコントロールの難しさを体感できたということですね。 そうですね。たとえば病院の役割は医療の提供ですが、利益が出なければ、設備投資もできませんし、スキルのある医療者の育成や確保もできません。本来の目的達成のために医療だけではなく財務や人事の視点も重要ですし、それを基に意思決定を行う必要があります。専門職である医療者は自身の職域に気を取られていて、部門横断的な視点を意識している人は少ないと思います。授業内でのビジネスパーソンとの議論では多面的、長期的な視点での思考を意識させられます。医師としての経験を軸に、より良い医療の解を模索する島村 亮助君SHIMAMURA, RyosukeKBS Life01

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