「ネット・マーケティング戦略におけるカスタマイズと価格訴求」、『流通情報』、388号、流通経済研究所、(2001年10月)
1.はじめに
インターネットによる通信販売(以下ネット販売)の一つの大きな特徴は、それが消費者向けのものであっても、個々の顧客の固有名詞が把握されたうえで、購買履歴が蓄積されるということである。それゆえ、消費者向けネット販売に関するマーケティング戦略の一つの有力な方向は、購買履歴等顧客情報の蓄積とそれにもとづく個別対応によって、顧客の囲い込みを図っていくことであった。
しかし、ネット販売は同時に、顧客による買い回りがきわめて容易であるという特徴も併せもっている。したがって、顧客情報の蓄積にもとづく顧客の囲い込みが可能になるのも、ある程度購買関与度(消費者の価値体系における当該購買の重要性)が低い場合に限られるとみなければなるまい。
購買関与度が高くなれば、とりわけネット上では顧客の買い回りは活発化し、顧客の囲い込みは相対的には困難になるため、異なるタイプのマーケティング戦略が求められることになる。
本稿は、こうした認識のもと、相対的に購買関与度が高い購買を標的とした消費者向けネット販売に焦点を当て、そこで想定される消費者行動との対応のなかで、求められるマーケティング戦略を提示しようとするものである。
2.高関与購買と製品力の強化
3.カスタマイズと標準化
4.ネット販売と価格競争
5.購買関与度と製品判断力
6.ネット・マーケティング戦略の規定関係
7.ネット・マーケティング戦略の動態
8.まとめ