「ネット販売における需給マッチングと顧客囲い込み」、『マーケティング・ジャーナル』、21巻2号、日本マーケティング協会、(2001年9月)


1.はじめに
1990年代後半になると、わが国においてもインターネットによる通信販売(以下ネット販売)に、注目が集まってきた。

ネット販売は、消費者にとってはパソコンから簡単に注文ができる便利な買い物方法である。

また、販売企業からみれば、家庭におけるパソコンが急増しているなか、パソコンから接続できるネットワーク上に通信販売用のカタログを掲載することにより、膨大な数の消費者への販売機会が生まれる。しかも、ネットワークへのカタログの掲載、製品の配送、代金の決済だけならば、流通コストも大幅に削減されるし、カタログには、画像・音声・映像などものせられる。さらに、だれでも容易にカタログの掲載ができるだけに、通信販売のみならず、流通機構全体にも大きな影響を与えかねない。

実際、わが国におけるネット販売の売上は、1995年に7億円であったものが、96年には285億円、97年には818億円、98年には1665億円、99年には3500億円、2000年には6233億円と急増し、2005年には7兆9652億円に達するものと予測されている(『通信白書:平成13年版』)。

もちろん、わが国の小売市場全体に占めるネット販売の割合は、2000年ですら1%にも及ばず、まだまだ誤差の範囲でしかない。しかし、その成長は急激であり、ネット販売への新規参入も、後を絶たない。

本稿は、この消費者向けネット販売に焦点を当て、その標的となるわが国消費者の特性変化やそれにともなうマーケティングの進展を踏まえながら、ネット販売におけるマーケティング戦略の一つのあり方を提示しようとするものである。

2. オープン型マーケティングの展開

3.需給マッチングと顧客囲い込み

4.ネット販売における情報活用の経済性

5.ネット販売における顧客囲い込みの条件

6.まとめ


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