KOBAYASHI Laboratory
M21 渡部 典子
『 エレクトロニクス業界における特許戦略 』
技術変化や環境変化を反映して研究開発にも経済的側面が強調される時代になり、知的財産権、特に特許の重要性が叫ばれる一方で、その制度的限界も露呈している。本論文はそうした状況下で企業が持続可能な競争優位を確立するために、特許がどのような役割を果たし、どのように最大活用すべきかを論じたものである。
研究方法として、文献研究と事例研究を用いた。一、二章で特許制度の現状を分析し、過去の理論研究を明らかにした後、特許の利用法に関して「排他的独占権」「リスク管理」「情報利用」「R&Dマネジメント」という四つの視点を打ち出した。それをもとに三章で、仮説(四つの視点に基づくフレームワーク)を構築した。四章では、事例研究を行い、エレクトロニクス企業5社の知的財産部にインタビュー調査を行った。
五章ではその結果を分析し、仮説との関連を検証した。四つの利用法およびその相関関係は、実務の現場で機能していたが、その実践において企業差が認められることが明らかになった。「排他的独占権」には四タイプの基本方針があること、「リスク管理」では基本戦略によって資源投入方針が異なっていることが明らかになった。「情報利用」や「R&Dマネジメント」においても特許の重要性は十分に認識されていた。
六章では、米国の事例と比較することにより、対象5社の特許戦略の強みと弱みを明らかにした上で、5社および他の日本のエレクトロニクス関連の企業に対する戦略提言として、フレームワークを効果的に循環させるための条件、すなわち、目標の明確化(自社にとって必要な特許の定義があること)、組織の整備(特許に関する意思決定ポイントの所在と目標との整合性が図られていること)、経営陣・管理職の理解とサポート、特許の価値に関する評価基準の設定(客観的な指標の重要〕を提示した。
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Last updated 04/03/22