KOBAYASHI Laboratory

 

 

M22 祖山 真美子

『 私立女子大学の競争戦略』

− 自立型女性の時代にどう対応すべきか − 


  18歳人口の減少、不況が長期化し家計が逼迫する中での学生の経済負担の増加などといった社会的背景によって、今、大学業界では競争が激化している。そこで、大学には施設拡張といった量的成長ではなく、質的成長、すなわち変化する経済的、社会的及び顧客である学生のニーズと期待に対応していくことが求められていると考えられる。また、女性の社会進出に伴い、女性が自ら求める地位が変化してきており、女性はその新しい地位を確立するためにより高度な教育を求めている。

このように、大学業界内における競争激化と女性から求められるニーズの変化という時代の潮流の中で、私立女子大学は今後どのように変革していかなくてはならないのだろうか。

 ここで、女子大学はそのドメインを『共学』と転換することは、より大きな競争の場に挑戦することになるだけでなく、むしろ女子大学としてのそれまでの強みが失われるのではないかと考える。こうしたことから、私立女子大学は、女子大学としてのドメイン転換を行わずに女子大学としての形態を維持しながら、厳しい環境変化の中で女子大学業界の中で生き残っていくためには、一体今後どのように変革していかなくてはならないのであろうかということを、6つの私立女子大学を事例として取り上げながら研究を進めている。

 分析のフレームワーク作成及び事例研究を行うにあたって、私立女子大学が「成功」しているかどうかについて『就職率』を指標として用いている。なぜなら、私立女子大学はどのようにして社会から見て生産性の高い能力ある女性を育てるのか、またどのように女性が自ら求める地位を獲得するために必要とされる教育を施すのかについて考えたときに『就職率』は大学の教育効果をあらわすひとつの指標だと考えるからである。そこで、私立女子大学にとって最終的なカスタマーを企業、そしてそのプロダクトは学生と捉えて、大学が応えようと考える企業のニーズと一貫性のもった戦略及び具体的施策をどのように構築して学生に教育を施すか、そしてそれが最終的にどのようにして私立女子大学の成功の評価指標である『就職率』の向上につながるかを考えながら分析を行っている。

 フレームワークを用いて6つの大学に関する事例研究を行った結果、『就職に強い』大学は、具体的な教育理念を打ち立てており、そしてそれが一貫性を持って入試制度とカリキュラムに反映されていることが分かった。また、カリキュラムも従来の女子大学とは異なる特色あるものであることも分かった。そこで、今『就職に弱い』大学が今後どのように変革していくべきなのかを考えたときに、方向性としては『差別化を図る』ということが挙げられる。すなわち、国際化や情報化といった時代に対応したカリキュラムをもつというような、目的が明確な専門分野に特化する、もしくは文系から理系まで幅広い分野を取り揃えて総合化するということである。

 このように本論文は結論付けているが、女子大学業界に焦点を絞っているため、大学業界における女子大学の競争戦略を立てておらず、女子大学の中で「成功」している女子大学に対する競争戦略は範囲外になっている、また、入学志願者を高校生及び浪人生に絞っており、主婦や社会人といった生涯教育の観点からの高等教育については言及していないといった限界がある。

 

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Last updated 04/03/22