KOBAYASHI Laboratory

 

 

M24 松平 康宏

『消費者信用産業の業界構造分析と信販会社の競争戦略』  


【研究の目的】

@ 消費者信用産業の全体像と、その中における信販業界と消費者金融業界の位置付けを明確にするとともに、それぞれの業界の競争構造とそれを規定する要因の変化を明らかにする。
A 現在の競争構造において競争優位を構築している企業とそうでない企業を明確にするとともに、その差・戦略の違いを個別事例研究を通じて明らかにする。
B 上記分析を踏まえた上で、消費者信用産業の中で信販会社(特にオリコ)の競争力を向上させるための具体的方策(信販会社の競争戦略)を提言する。

 【研究のプロセス】 第一に、業界(広義には消費者信用産業界、狭義には信販業界・消費者金融業界それぞれを指す)の競争構造を見るためのフレームワークを構築し、そのフレームワークに基づくデータ(信販業界は1992年3月期、1997年3月期、2002年3月期の公表数値、消費者金融業界は1997年3月期、2002年3月期の公表数値)を用いて、統計的分析手法の1つである主成分分析を行い、業界の競争構造を明確にすることを試みる。この段階において、業績不振・株価低迷の企業が少なくない信販業界と、好業績企業が多い消費者金融業界それぞれの競争構造を規定している要因とその変化が明確になるとともに、その競争構造下において競争優位を構築している企業の特定が行われる。

 第二に、競争優位を構築している企業と構築できていない企業の差を明らかにすべく事例研究を行う。これにより、競争優位を構築している企業にみられる共通要因を探るとともに、信販会社の競争戦略策定にとっての示唆を導き出す。

 以上の分析を踏まえた上で、信販業界の中でかつては競争優位を構築していたが、現在は競争上の地位を悪化させてしまっているオリコ(株式会社オリエントコーポレーション)に対する提言を行う。

 【主要な結論】 従来、規模が重視されていた信販業界の競争構造は「信用力―構造改革力」で規定されるものに変わってきている一方、消費者金融業界の競争構造は現在「規模の効果を基盤とした将来価値創造力―成長と回収のバランス」で規定されていることが明らかになった。今後、信販業界・消費者金融業界という分け方は適切でなくなるかも知れないが、現時点では競争構造が異なっていたわけであり、今後さらにお互いの得意業務(信販業界が消費者金融業務、消費者金融業界が信販業務)を拡大しようとする場合には、相手の業界の競争構造を規定する要因をよく理解した上で、つまりその規定要因を強化することができなければ競争優位は構築できないということを理解した上で、競争戦略を構築する必要がある。

 また事例研究からは、現在競争優位を構築している企業は@商品やサービスの差別化を志向し、実践できていた、A意識改革を促すために成果・実績主義を推し進め、目標貫徹意識を浸透させるとともに、組織階層を圧縮し意思決定の短縮を図っているケースが多かった、ことなどが明らかになった。

 これらの分析結果を踏まえ、競争優位構築企業の共通要因であった「商品やサービスによる差別化」を志向し、戦略的に取り組むことによって、企業として特徴ある個性・アイデンティティを確立することが、オリコにとっても必要である、ということなどを提言している。

 

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Last updated 04/03/22