KOBAYASHI Laboratory

 

 

M25 長谷川 裕史

『 分社化戦略の有効性に関する一考察  』
- 会社分割法制導入後2年間の軌跡 -


  分社化戦略の有効性を導入後2年間の会社分割事例を題材に戦略的視点から理論的および分析的に研究を行う。分社化、多角化、およびグループ企業の資本政策等に関する先行研究を概観した後、その理論的考察を通じて次の仮説を設定する。

H1-1:分社化は分割会社の株主価値を高める。
H1-2:100%未満分社化は分割会社の株主価値を高める。
H1-3:100%分社化は分割会社の株主価値を高める。
H2-1:関連分社化において、100%未満分社化よりも100%分社化の方が分割会社の株主価値を高める。
H2-2:非関連分社化において、100%分社化よりも100%未満分社化の方が分割会社の株主価値を高める。
H3-1:高利益率分社化と低利益率分社化とで、分割会社の株主価値に与える影響に重要な差異はない。
H3-2:高利益率分社化において、100%分社化と100%未満分社化とで、分割会社の株主価値に与える影響に重要な差異はない。
H3-3:低利益率分社化において、100%分社化と100%未満分社化とで、分割会社の株主価値に与える影響に重要な差異はない。

 上記仮説の分析方法は、2001年4月から2年間の会社分割を対象に累積残差リターン(CAR)を用いたイベント・スタディを採用する。その結果、H1-1ないしH1-3は各仮説の内容に沿った結果が観察されたものの、H2-1およびH3-1ないしH3-3については観察されなかった。H2-2も一見仮説の内容に沿った結果が観察されるものの、サンプル数過少のためこれをもって仮説が確認されたとはいえない結果となった。

 次に、上記分析結果を補うべく事例研究を行う。上記分析で特徴的なCARを示した三菱ウェルファーマ、神鋼電機、および日本コロムビアによる分社化3事例を分割会社、コア事業、分割事業、分社化、および分割事業会社の側面から多面的に分析する。かかる事例研究の結果、分社化がその企業の株主価値に重要かつポジティブな影響を与える要素として、@財務的課題の主要原因がコア事業にある、A分社化が長中期的企業戦略に基礎付けられている、B分社化のメリットが@の課題解消に適合、C分社化が分割事業にもメリットを与える、およびD分社化後の経営・事業遂行のための組織的対策がある、の5点が導かれた。

 最後に上記研究の結論として以下のことを導く。まず、分社化の有効性として分社化は総体的にみて分割会社の株主価値を高める効果が期待できる。次に、株主価値を意識した分社化モデルとして以下の要素を十分考慮すべきである。

@ 多面的視点
A 企業戦略性
B 分割事業(会社)戦略
C 他社提携
D 分社化プロセス

 

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Last updated 04/03/22