KOBAYASHI Laboratory
M25 熊川 敦子
『 オープン戦略に関する研究』
− 競争優位を確立する条件 −
本論文は、ネットワーク外部性が効く業界において、有効となるオープン戦略の条件とは何かについて研究している。
ネットワーク外部性が効く業界では、デファクト・スタンダードをとることは市場の優位性を確立する有効な手段であり、そのために自社の持つ技術情報など経営資源を外部に公開するというオープン戦略がとられている。また、オープン戦略により共通化・標準化した外部資源を利用しさらなる自社の優位性を確立するオープン戦略も存在している。この標準化を利用した戦略は、市場での優位性の確立を高くするが、自社の差別化を困難とし他企業の参入障壁を低くする。つまり、デファクト・スタンダードを獲得した企業が必ずしも優位でいられるわけではないといえる。
そこで、本論文では、オープン戦略がとられている業界としてコンピュータ業界をとりあげ、オープン戦略について分析を行った。事例研究では、コンピュータ業界を2つの財の性質「ソフトウエア/ハードウエア」「消費財/産業財」を用いて4つのタイプの市場に分割し、環境は「新規参入者・競合企業・代替品・供給業者・顧客」の5つのプレーヤーで、企業と戦略については「経営レベル・製品技術レベル・製品販売レベル」の3つのレベルに視点をおき分析を行った。そして、どのようなタイミングでオープン戦略が有効となるかといった、戦略の条件と、オープン戦略をとった場合に企業が抱える問題点とその限界について研究した。
その結果、以下の結論を導くに至った。
<結論>
・ どの製品分野でも汎用性が高いほうがオープン戦略が効きやすい。
・ ハードウエア・消費財の場合、モジュール化し外部資源を活用することで周辺機器・サービスなどへの投資を抑えることが可能となり、低価格戦略が可能となる。追随企業は、低価格とサービスなどの差別化が必要となってくる。
・ ハードウエア・産業財の場合、システムのカスタマイズが必要なため、導入期・成長期ではクローズド戦略も有効である。高い技術力が要求されるため、追随企業でも参入障壁は高い。
・ ソフトウエア・消費財の場合、早い時期に先行オープン戦略で市場とシェアの拡大が必要である。追随戦略は、デファクトの他ソフトウエアと連携することで有利な展開が可能となる。
・ ソフトウエア・産業財の場合、早い時期に技術を公開し製品を浸透させ汎用性の高めることで、市場の拡大が可能になる。しかし、派生製品が氾濫する傾向もあり、早期のライセンス化が有効である。
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Last updated 04/03/22