KOBAYASHI Laboratory

 

 

M25 大矢 健一

『企業の経営資源活用能力とM&Aによる経済的成果の実現』-


 本論文の目的は、M&Aによる成長戦略を志向する経営者に対する戦略提言を行うことにある。ここ数年日本企業によるM&Aの実施件数はますます増加しているものの、同時にM&Aは成功確率が低いとして様々な問題点を指摘されているのも事実である。では、買収企業の経営者はM&Aという成長戦略を選択するに際し、どのようなマネジメントを行うべきなのであろうか。これらを明らかにすることが、本論文の主たる問題意識である。

 本論文ではまず経営資源論やM&Aに関する理論研究を通じて基本概念を整理した後、M&Aに関する先行研究調査を行いその成果と限界を明らかにした。そして「M&Aの組織統合段階における買収企業の経営資源活用能力、なかでも人や組織に関わる能力の巧拙が、M&Aによる経済的成果の実現に大きな影響を与えている」という本論文のアプローチを明らかにした。さらに予備事例研究および先行研究調査を経て組織統合段階において重要となる経営資源活用能力に関する仮説を構築し、1992年から2001年までの間に行われた日本の上場企業同士の合併事例67件を対象として定量分析を実施、仮説の検証を行った。そして、67のM&A事例を戦略類型毎に分類し追加的に定量分析を実施するとともに、M&Aの成功事例を複数取り上げ、定量分析による把握が難しい中長期にわたり継続的・漸進的に実施される変革プロセスについて、定性分析を行った。

その結果、以下の結論を導くに至った。

<定量分析に基づく結論>

・自社の選択するM&A戦略に応じて、重要となる経営資源活用能力を特定し変革を図らなければならない。
・ 垂直型M&Aの場合には、合併発表後も経営者を交代させることなく経営の継続性を維持すべきである。
・ 垂直型M&Aの場合には、合併以前に他社との豊富な提携経験を蓄積しておく必要がある。
・オペレーショナルレベルの経営資源活用能力の最適な変革方法は、業界毎に異なる可能性がある。

<事例研究に基づく結論>

・経営トップは強い個性を有し、自ら率先して組織を引っ張っていくスタイルのリーダーシップ発揮が求められる。
・明確なビジョンに基づく成果主義の導入、従業員向けの積極的なコミュニケーションを経営トップ自ら率先して行い、従業員の新組織に対するコミットメントを高めていくことが重要である。

 

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Last updated 04/03/22