KOBAYASHI Laboratory

 

 

M25 杉本 圭以

『百貨店グループの競争戦略』

−本業に次ぐ収益貢献事業の可能性(グループ経営の視点から)−


 現在、日本の百貨店業界においては、厳しい景況感や個人消費の停滞などの経済情勢もあって売上は低迷している。外資系小売業の参入や新業態の進展によって、競合関係は激しくなっている。百貨店を取り巻く環境はかなり厳しいが、百貨店が抱える内的な問題点も深刻なものである。長年のお取引先依存体質からMD力や販売力が低下しており、百貨店本来の役割を果たすことが難しくなりつつある部分がある。そもそも百貨店という業態は、成熟状態にあると考えられる。お客さまが百貨店に求める役割も時代とともに変わってきているが、それに対応しきれていない。百貨店は、独自の品ぞろえや仕入ミックスなどエディティング機能を強化し、顧客満足を達成していく必要があるが、問題点の克服には時間がかかりそうであり、今後飛躍的に売上が伸びるとは考えづらい。日本の百貨店は、いわゆる大企業が多いが、株式を公開している企業グループとして考えた場合、今後飛躍的に売上が伸びるとは思えず、かつ低収益体質である「百貨店業」に過度に依存することは危険であろう。本論文では、日本の百貨店グループにおいて、本業である百貨店業に次ぐ収益貢献事業の育成の必要性を鑑み、その可能性を検討する。

研究の方法としては、まず、構造主義的アプローチ、経営資源アプローチの経営戦略論、多角化の先行研究、小売業の研究などの文献による理論研究を行った。そして日本の百貨店業界の状況、百貨店グループのグループ経営について分析した後、事例研究を行い、本業に次ぐ収益貢献事業の育成に必要な要因を抽出した。

本論文では、本業に次ぐ収益貢献事業について、当然のことながらただ「多角化をすればよい」とはとらえていない。進出する業界の分析を行い、自社の経営資源との適合性を重視することが必要と考える。自社の競争優位を構築する経営資源を他事業に適用し、強化することで、グループ全体を強化する事業を検討するべきと考える。

本論文では、本業の百貨店業で競争優位を構築するための重要な経営資源として、「MD力」と「ブランド力」を想定、百貨店グループのグループ経営および関係会社の分析を行った。事例研究は、百貨店グループの関係会社である島屋スペースクリエイツ株式会社、株式会社エムアンドエー、株式会社二幸、株式会社クイーンズ伊勢丹の4社について行った。

百貨店グループが他事業で優位性を得るためには、その事業で必要な専門的スキルに加え、何らかの「提案」を加えることで他社との差別化を図る必要がある。そこには百貨店のMD力を適用することは有効であり、事業によってはブランド力も有効になる。また、組織的には、事業部門(関係会社)のビジョンを明確に打ち出していくことが必要である。このような考えから、株式会社伊勢丹の今後のグループ経営の方向性に対する提言を行っている。

 

[論文タイトル一覧]


 [小林先生Profile] [担当科目紹介] [小林ゼミ] [サブゼミ書籍] [Contact us] [KBS Home page]

[Top page に戻る]

Last updated 04/03/22