KOBAYASHI Laboratory
M28 曺 永澤
『ディスプレイ・デバイス産業に於ける競争優位戦略 －有機ELディスプレイに対する戦略提言－』
①受注型のディスプレイ産業は買い手との関係性が重要である。良い買い手とは高いブランド認知度と良いチャンネルを持っている市場構想力が高いメーカーである。
②ある程度の市場構想力を持っているメーカーであれば垂直統合型より、買い手が多いディスプレイ専門型のほうが買い手との関係性の側面で有利である。
③量産型のディスプレイ産業は経験曲線が重要である。買い手が多く、大量生産・大量販売が出来れば生産技術を中心としたコアテクノロジーのレベル・アップに繋がる。
④量産型のディスプレイ産業は投資能力がなければビジネスを続けられないので、資金能力が大事である。自社の投資能力を見極めて事業の参入可否を決める必要がある。
⑤量産型のディスプレイ産業は受注型でもあるので 常に買い手とのコミュニケーション密度を高めるべきである。
⑥非ネットワーク外部性型のディスプレイ産業は機能性が優れた製品と規格さえ開発できれば競争優位のチャンスがあるので開発技術を中心としたコアテクノロジーのレベル・アップは宿命である。
⑦世代間・規格間の競争の並存型のディスプレイ産業は市場の流れと技術の流れをよく読んで、常に市場構想力、コアテクノロジーのレベル・アップに力を入れるべきである。
⑧世代間・規格間の競争の並存型のディスプレイ産業は買い手・売り手との調和を得るためにクラスタ形成が必要である。クラスター形成は、シナジー効果を生み、コスト節減に繋がる。
⑨世代間・規格間の競争の並存型のディスプレイ産業は常にコスト競争に巻き込まれる可能性が高いので競争優位ファクター全般のレベルを高め、コスト・リーダーシップを持つことが重要である。
⑩先端技術指向型のディスプレイ産業は技術進歩が早く、特許紛争による競争相手の脅威が増すので、常に基礎技術から開発技術、生産技術に至るまでコアテクノロジーのレベル・アップに力を入れるべきである。
⑪ディスプレイ産業の5つの特徴とそこから生まれた7つの競争優位ファクターはメビウスの帯のように繋がっているので、1つのファクターが欠けても競争優位にはならない。
⑫ディスプレイ産業の7つの競争優位ファクターの中で特にその中心になるのはリーダーシップである。技術シーズの確保の意思決定、量産投資に対する意思決定、戦略展開における意思決定のスピードなどでの失敗は、他の競争優位ファクターでの失敗よりも大きなダメージを負うことになる。
⑬有機ELの競争優位戦略に対する提言
既存の戦略を基にした7つの競争優位ファクターはレッド・オーシャンでもブルー・オーシャンでも基本的に備えなければならない必須項目であるので、有機ELが競争優位を確保するのにも必須項目である。その上で次のような二点の戦略提案が出来ると思われる。
まずは、液晶が参入していない新しい市場を探すことである。非常に難しいが、液晶より薄く、液晶より明るく、液晶より動画に向いている特長を生かせる新しい製品があると思われるのでその市場を「新市場」として開拓する必要があると思われる。
第二は、QCD(Quality, Cost, Delivery)の差別化である。クォリティーを極端に上げるか、限界費用を極端に下げるか、デリバリーを極端に早めるかなどの差別化を図ることである。そして、製品ごとにQCDのバランスを減らしたり、取り除いたり、増やしたり、付け加えたりして買い手の価値を上げる「バリュー・イノベーション」を起こすことが必要であると思われる。
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Last updated 05/03/10