KOBAYASHI Laboratory
M28 村山 淳
『アウトソーシング戦略における供給者との関係性マネジメントの複雑性』
アウトソーシングの重要性は益々高まり、範囲・規模・手段の多様性が進む中、供給者の市場も着実な拡大を遂げている。一方、需要側にとっての「供給者との関係性マネジメント(Outsourcing Relationship Management:ORM)の複雑性」は、供給者からは指摘し辛く、需要側の事前認識不足は「苦労事例」の一要因となっている。本論文は、アウトソーシングの目的や基本アプローチといった基本的な方向付けがなされる際、このORMの複雑性を予見できるか、つまりORMの複雑性の傾向の有無と、その低減に向けて何をなすべきかの示唆を得ることを目的とした。
分析過程においては、取引費用理論、エージェンシー理論等の理論研究、及びアウトソーシング・マネジメントに関する先行研究を行った後、アウトソーシングを目的軸と基本アプローチ軸によって4つのタイプに分類した。(@変動費志向型、Aベストプラクティス適応型、Bデコンストラクション型、Cプロセスイノベーション補完型)次に、ORMの複雑性の構成要因を、PDCAサイクルを参照しながら設定した。(@範囲の複雑性、A合意形成の困難性、B実現の不確実性、C協力・連携の困難性、D可視評価の困難性、E監視行動の複雑性、F移行の困難性、G修正・拡張の困難性)各構成要因が、4つの各タイプにおいてどう異なるかを仮説とし、事例研究(文献調査、インタビュー訪問)を通じて仮説の適合性を分析した。分析事例は以下の通りである。ミスミ(大和総研)、ワタミフードサービス(富士通)、三洋信販(IBM)、三井住友銀行・松下電器産業・花王(HRMSC)、ローソン(NTT-BA)、BP Amoco(Exult):海外事例、セブンイレブン(NRI&NEC)、ソフトバンクBB(ベルシステム24)、ナイキ(日本通運)、松井証券(トランスコスモス)、三共(EPS)、某外資系部品メーカー(ポリプラスチック)、以上12事例(括弧は供給者、敬称略)
事例研究の結果、各タイプにおいて共通の傾向が見られた。@変動費志向型においては、移行の困難性が高い傾向があり、計画段階を慎重に行いつつ撤退オプションを残すことが重要という示唆が得られた。Aベストプラクティス適応型においては、協力・連携、監視行動、修正・拡張の困難性が高い傾向があり、アウトソーシングのポートフォリオ管理が重要であるという示唆が得られた。Bデコンストラクション型においては、4タイプの中で最も困難性が多要素で高く、このタイプの実行には企業全体の戦略的意図が不可欠という示唆が得られた。Cプロセスイノベーション補完型においては、実行課程のORMの複雑性は低いものの、供給者との関係評価が難しくなる為、客観的な評価システムが必要という示唆が得られた。アウトソーシング戦略の立案の際は、目的軸とアプローチ軸でのタイプ分類が概して機能した。また、「現在のタイプ」を確認しながら、供給者との関係形成過程のアジェンダとして、本論文で述べたORMの構成要因を考察することも、概して適用価値があると考える。
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Last updated 05/03/10