KOBAYASHI Laboratory

 

M26 直原 知弘

『エレクトロニクス企業の戦略的アライアンスに関する一考察』


 日本の従来型企業は、主に自社内の経営資源をR&Dから生産まで幅広く配布することで、コア・コンピタンスを形成してきた。しかし近年の急速な技術革新、また製品ライフサイクルの短縮化に伴い、従来のビジネス手法では、革新的製品を創造し、業界をリードするトップ企業となることは難しくなりつつある。また益々、進行する企業間競争のグローバル化は、企業活動に一層のスピードを求めている。

 以上の理由により、日本企業は、コア・コンピタンスを明確に定義し、戦略的「選択と集中」を行い、当該事業へ限られた資源を集中的に投下することによって、競争力を強化することが不可欠となっている。しかしそれに反して、求められる事業領域・研究開発分野は広がっている。インターネット・ブロードバンドが家庭、個人に普及するにつれて、人々のニーズの多様化は加速している。そのため従来、求められていなかった異分野の知識が求められ、今後、その流れは強くなるであろう。

 上記の矛盾した問題に対する解として、戦略的アライアンスによる外部資源の活用が考えられる。しかし近年、アライアンスの数は増加しているものの、当該企業が狙い通りの効果を生み出しているアライアンスは少ないと思われる。

 アライアンスの成功には“アライアンス・マネジメント”が重要な鍵を握ると考える。アライアンスの目的は一つではない。パートナー独自の技術力を利用するため、またコスト削減を行うため、など様々考えられる。当然、その目的によりマネジメントの手法が異なることが考えられる。アライアンスの成功には、アライアンスの目的をはっきりさせ、分類すること、そして分類に応じたマネジメントを行うことが肝要であろう。

 本論文では、定性事例研究を通じて、成功するアライアンス・マネジメントの要諦を明らかにした。事例研究の方法としては、インタビュー及び各種文献を参考にした。研究対象としては、革新的技術力が競争優位の源泉であるが、同時に技術トレンドの推移も激しく、常に素早い技術革新が求められるという業界特性に身をおくエレクトロニクス企業に絞った。そして最終的に、エレクトロニクス企業のアライアンス・マネジメントの要諦を、筆者の派遣元である富士通株式会社への提言として纏めている。

 論文全体の流れとしては、@)理論研究、A)アライアンスの分類・フレームワークの導出、B)事例研究、C)結論、D)富士通株式会社への戦略提言、という形である。始めに理論研究により、アライアンスにより活用・獲得する資源を「ナレッジ」に絞り込んだ。次に、外部ナレッジを活用・獲得するためのアライアンスの分類を行った。理論研究の結果と、エレクトロニクス企業の競争優位性構築に有効なアライアンスとして、筆者は、アライアンスを、@次世代テクノロジー学習型アライアンス、Aコア技術融合型アライアンス、Bネットワーク企業体構築型アライアンス、に3分類している。さらに理論研究から、アライアンスの成功要因の分析に必要不可欠な要素を洗い出し、分析のフレームワークを導出している。事例研究の章では、@次世代テクノロジー学習型アライアンス、Aコア技術融合型アライアンス、Bネットワーク企業体構築型アライアンスの成功事例を2例ずつ選択し、理論研究で得られたフレームワークにより各々の成功要因を分析している。結論の章では、各類のアライアンスの成功要因をさらに一般化し、学問的に、より意義のある提言に纏めている。結果、各類のアライアンスで、成功するマネジメントの手法は異なることが明らかとなった。そして最終章では、本論文で得られた結論、つまりアライアンスの分類、そしてその分類ごとの最適なマネジメントを、富士通株式会社において実践するための施策を提言している。

 

[論文タイトル一覧]


 [小林先生Profile] [担当科目紹介] [小林ゼミ] [サブゼミ書籍] [Contact us] [KBS Home page]

[Top page に戻る]

Last updated 05/03/10