山田 美穂
CBSフィナンシャルサービス 代表取締役社長 |
大学卒業後、三菱商事、メリルリンチ日本証券等を経て、2014年1月よりCBSフィナンシャルサービス代表取締役社長。破綻の危機に陥っていた同社を、美容医療・健康分野に特化した信販会社に転換させ再生を図る。2020年3月慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了、経営学修士。東京都主催「第2回東京女性経営者アワード・継続成長部門」受賞。
大学卒業後入社した三菱商事の大阪支社での営業アシスタント業務から私のキャリアは始まりました。当時は結婚退職するという時代。しかも社内結婚で相手が東京勤務なので、2年半勤務後退職して東京に移り、入社したのがメリルリンチ日本証券(当時は米国法人の東京支店)。金融の知識も経験も、留学経験も無く英語が堪能でもないなか図々しく面接を受けにいったところ、面接官から「明日からきてもらっていいですか」といわれました。ゼロから証券会社の仕事を覚えていき、それから延べ16年お世話になったわけで、ご縁はどこに転がっているか本当にわかりません。
メリルリンチでご一緒した方が独立されることになり、その代表と私を含め3人で投資会社を立ち上げました。そこでの投資案件のひとつが、現在社長を務める信販会社のCBSフィナンシャルサービスでした。メインバンクの破綻によりRCC(整理回収機構)のお世話になっていた同社を取得し、私はCBSの社外取締役として、再建のための整理に取り組みました。資金繰りのメドも立ち、再建のスピードを上げるための次の打ち手は組織を再構築し実際に現場を動かしていくこととなりますが、無名で大きな累損が残っている会社の社長を引き受けてくれる人など見つかりそうにないのが現実でした。そんなときに株主と目が合ってしまったのです。「担当者としていちばんわかっているのは君だろう」と言われ、「確かに分かってはいます」と。「経験もないし、やれるかどうかわからないけれど(社長を)やれると思って頂いたのだから、ベストを尽くすだけだ」と覚悟を決めて社長を引き受けました。
社長に就任して3年ぐらいは、赤字の会社を黒字にすること、現在メイン事業になっている消費者向けの美容健康に関する分割払いを軌道にのせることに注力しました。「次は成長期だ」と思った頃から、急に悩み始めました。成長への道筋はいっぱいあります。どの道を選んでもいいわけです。小さい会社ですから、「会社=社長」という面もあります。社長の歩みが止まってしまうと、会社の成長もありません。そこで、何かをインプットして自分のジャッジに背中を押してくれる、確固たる自信を持ちたいと思い至りました。
そして、選んだのが「学校に行って勉強しよう」という方法でした。いろいろ調べてKBSを選びました。なかでも、土曜日中心のカリキュラムで、仕事を続けながら学ぶことができ、素晴らしい教授陣が揃っているEMBA(Executive MBAプログラム)に魅力を感じました。一方的に授業を受けるのではなく、国内外のケースをもとにしたディベート中心という学習方法が決め手になりました。授業見学会にも足を運びましたが、みなさん活発に議論し、やっぱり双方向なのだ、と確認もでき、最終的にはEMBAしか受けませんでした。
入学後、クラスでのセッションを重ねるうちに、業種、理系文系、年齢、性別など多彩で、誰もが自由に発言できて、しかもそれを全部受け入れるというサイコロジカル・セーフティが形成されている場、それがEMBAなのだと体感し、学びの世界が大きく広がりました。
EMBAの特色といえば、ビジョナリー(Visionaryプログラム)と海外国内のフィールドです。他校にはないし、絶対だと思います。「50年後の社会に向けて我々ビジネスリーダーの果たす役割は何か?」を2年間かけて徹底的に考え抜きます。仕事をしていると毎日の判断に目を奪われ、視野がどんどん狭くなっていきます。自社、競合のことだけを見て、短期的な利益を優先してしまうことに、改めて気づかされました。
「私たちはせっかくここに集まって、いろいろなことを一緒に考える仲間なのだから、もっと大きい視点で社会の役に立てる人間になろうよ」。EMBAではそんな会話がかわされます。知らない方が聞くとちょっと熱すぎて、引いてしまうくらいの熱量がありました。クラスの圧倒的多数はこの考えに共感していましたし、卒業後もこれを続けていこうと考えていたと思います。ビジョナリーこそがEMBAで最高に素敵なもので、「EMBAとは?」と問われれば「ビジョナリーだ」と答えます。
フィールドワークは国内と海外があり、クラスやケースでの学びだけでなく、学んだことを実践するという意味で大いに役立ちます。協力してくださる実際の会社・組織の問題解決を「自分ごと」として一生懸命に考えて提言する。理論と現実をミックスさせて、相手に伝え、理解を得るという学びの体験は本当に貴重でした。海外フィールドは、世界を相手にものを考え、新しい視座をもつ貴重な経験でした。加えて、泊まりがけで喧々諤々やるので、仲間との深い絆が生まれます。EMBAを修了後、あの濃密だった週末や仲間との時間を喪失して「EMBA Loss」に陥る人が続出します。
当社は「美容と健康に自己投資したい消費者」と「サービスする側の中小規模事業者」、双方を金銭面からサポートする会社です。美容サロンなどのサービスを提供する中小規模事業者は、金融機関からの融資審査が通らない会社も多いのが実情です。そこに我々が先にお金を提供するので事業資金の調達先としての役割を求められています。加盟店さん、消費者、そして当社、「三方良し」を目指して応援する会社を創業時より目指しています。
今後はさらに、新しいスタイルのビジネスやサービスを始めたいという方を応援できる会社でありたいと思います。私自身、信じてチャンスを与えてくださる人とご縁に恵まれて、ここまでこられたので、自分や自社が社会にどんな形で何をお返しできるのかという使命感を持つべき段階に来たのだと思います。関わっている人みんなを幸せにしたいという気持ちを持ち続けて、ビジョナリーで学んだように社会に恩送りしていきます。
EMBAでの2年間、仕事と学業の両立や負荷は決して軽いものではないことは確かですが、「本人がやりたければできる」と思います。ご本人が本当にそこまでしたいか、という気持ちが何よりまず重要です。
人生100年時代の後半に入った自分が、EMBAでこんな深い友情が育める、本当に仲間と呼べる人たちと出会えるとは予想もしていませんでした。一人一人EMBAに対して求めるもの得られるもの感じるものは違うと思いますが、とても濃い時間を過ごせることは間違いありません。少しでも興味があれば、ぜひご自分で体験していただきたいと願っています。