徳永 紗良
2015年立命館大学卒業。株式会社東芝、富士通株式会社を経て、PwCコンサルティング合同会社に入社。
製造・通信業界を中心とした新規事業の構想策定やシステム実装支援、調達・会計領域のBPR業務に従事。2024年4月より休職し、KBSへ入学。
大きく変化する社会の中、これからの日本企業の成長と、地域や社会の発展に貢献するコンサルタントには、高度な経営管理能力と、それぞれの企業・社会への深い洞察力・分析力が必要である。川上から川下まで一貫したサービスを提供する総合コンサルタントとして、企業・社会のより良いパートナーを目指す徳永紗良君に、MBA取得の意義についてインタビューを行った*。
コンサルティングファームに転職したきっかけは2点あります。
富士通に在職していた当時、自社を含む多くの日本企業がメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用に移行し始めました。現在は、スキルベース組織が注目されていますが、このような、流動性の高い雇用システムの中、社会で活躍するためには、社会を俯瞰する鳥の眼を鍛える必要があると実感したことが1点目の理由です。
2点目は、富士通で仕事をする中で、コンサルタントから事業支援を受けたことがありました。そのコンサルタントが、高度な分析とデータに裏打ちされた根拠を用いて、各業界の高位の管理職を説得し、事業を進めていく力強い姿を目の当たりにし、私自身も事業会社を支援する立場として社会インフラを支えたいと決断した為です。
コンサルタントとして提供してきた私のバリューを分析すると、東芝と富士通の2社を経験しているので、事業会社・製造業出身としての独自の経験や知見を活かし、現場に刺さるソリューション開発等で強みを発揮できたことです。ただ、コンサルティング業務の前提となる経営知識の不足や、戦略思考・洞察力が鍛えられていないこと等、その弱みを痛感する場面も多くありました。
ありがとうございます。(笑)
特に印象に残っているプロジェクトは、大手通信会社の会計に関わる業務自動化のプロジェクトです。アサイン直後は非常にハードで、会計システムの詳細な機能や、RPAコードの細かい確認など、寝る時間を削って割と力技でキャッチアップしました。
その中で、私は何よりもお互いに信頼できる関係性の構築を大切にしていました。皆さまのご協力があってこそ、難しい業務に対処できると考えている為です。障害発生時や改善依頼があった際には、常にその時にできる最大限の対応を心がけていました。
また、そのプロジェクトは現場のオペレーション変更や他部門への影響等が生じる範囲が広く、キーマンの意思決定を促す機会も多かった為、何がお客様にとって最適な方法か、自分にできるかを考え抜きました。
最終的に、決算業務の早期化と工数削減に貢献することができました。その時にいただいた感謝のお言葉は非常に大切にしています。このプロジェクトは、自身の成長にも繋がったため印象深く残っていますし、また同じクライアントのプロジェクトに戻る機会があればと考えています。
「オプチカルディストーション」のケースが印象的です。
はい。各グループに分かれて、WTPや原価、その原価計算からどの程度付加価値をつけるか、どの程度コストを削減できるか、導入期の製品なので、いくらぐらいが1番その妥当な価格か、変動費と固定費の扱い方、どの規模の農場で試験をする必要があるか、など、非常に様々な条件を考えて、それをクラスディスカッションでそれぞれの妥当性を議論し合いました。このケースは、私の新規事業の立上げ時の経験と共通する部分も多く、新しい事業での経験を棚卸しできました。
MBAに期待していることは大きく2つあります。
まずは、自身の課題だと感じていた経営知識の習得と戦略思考の習慣化です。ケースを通じて、個人研究、討議とレクチャーを繰り返し経験するため、思考の深掘りと理解力の強化等が自然と鍛えられると実感しています。
次は、専門性です。ビジネススクールで専門性というと疑問を持たれがちなのですが、特に、PwCのような総合系コンサルは戦略策定からシステム実装まで包括的に支援するため、ジェネラリストのスキルが求められます。しかしながら、管理職になると「この業界・領域に強い」という専門性も求められます。私は、MBA2年目の研究活動を通じて、経営・事業戦略を中心に専門性を高めたいと考えています。
*本記事は、慶應義塾ビジネススクール学生により、M47期広報委員会独自タスクである<ビジネススクール連載 〇〇に聞く>の一環で企画、作成された。