田中 雄 氏

互いの考えをシビアにぶつけあい、切磋琢磨することにより、自分が行う意思決定も徐々に洗練されてくることを実感します


田中 雄 | Claremont University Pitzer College 経済学部1995年卒業
(㈱マングローブ休職)

学ぶ時期について

私は38歳でKBSへ入学したのですが、実際に授業を受けてみて30代後半でのMBAは遅いと感じることはありませんでした。むしろ私にとってはぴったりの時期で実り多きものだと実感しています。新卒の方、社会経験を経ての30歳前後の方、さらに経験を積んだ30代後半の方とではMBAに対する考え方も目的も全く異なると思います。

MBAの取得に「何歳ぐらいがいい?」という質問をされることがありますが、その質問に答えはないように思います。クラスの中には社会経験豊富な人がいた方がいいこともあるし、また一方で若い人がいた方が活性化する場合もあります。それぞれの年齢によってMBAの活かし方があるのだということを感じています。ちなみに私の場合は、私と同年代の方々とのコミュニケーションから得るものと同じかそれ以上に、20代の若い年代の人との関わりから多くの気付きや考え方を得ることができました。

会社組織にいたのでは、決して私の耳には入ってこないであろう情報がKBSでのディスカッションにはたくさん詰まっていたように思います。


MBAに挑戦するということ

家庭を持っている私にとって、仕事を休職しKBSへ挑戦することは一大決心でした。正直なところ、会社の同僚や上司、周囲の人々からは多くの反対も受けました。私の場合は、40歳を前にして残りの社会人人生をどのように過ごすかを真剣に考えている時期でもあり、またその社会人生活に悔いを残さないという意味においてもKBSへ入り学べるものは可能な限り学びたいという強い気持ちがありました。

田中 雄 氏

そんな中、唯一決心する際に悩んだのは家族のことでした。仕事を休職し、2年間は収入が無くなりますし、学費も決して安いものではありません。このお金を子供たちや家族の為に費やしたほうがいいのでは?と考えたこともありました。またその反面子供たちに対しては、いくつになっても前向きに活き活きと自分の目的に向かって頑張っている父親を見せるのも大きな価値がある事ではないかとも思いました。

家庭を持つ人がMBAを目指すとき、家族のことやお金の使い道など、価値観が問われる場面に多々遭遇するかと思います。人それぞれ価値観は異なるので、何が正しくまた間違っているということはないと思いますが、自らの目的を明確にし、新しい一歩へ力強く踏み出すことも決して悪くない選択の一つであったと今は実感しています。


本質を見抜く力、自分の意思決定を伝え・納得させる力

KBSの1年次での勉強を通じて学んだことは、ビジネスにおける意思決定を相手に伝え、納得してもらうという"伝える力・納得させる力"のトレーニングであると感じています。KBSの授業では、多くの理論やフレームワーク、実際のケースを用いた事業の起承転結などを学ぶのですが、その過程の最終段階において必ず自分自身の意思決定が問われます。そしてその意思決定とは、ただ単に自分の考えとして自分の内側に秘めていれば良いのではなく、周囲の人々にその考えを伝え理解してもらうという場面が含まれます。

多くの理論やフレームワークを知っている人や他の人の意見や戦略を批判することができる人は数多くいると思いますが、自分で意思決定を行い、戦略を立て、周囲の人々に自分の考えを説明し納得させることができる人はそれほど多くはいないのではないでしょうか。KBSでは"知識は豊富にあるが、人前でそれをうまく説明できない"や"反対意見に対して全く反論や説明ができない"ということでは、その知識は無に等しく、全くダメなのです。

田中 雄 氏

そしてグループ討議やクラス討議において、自分の意思決定や考え方を納得させると言っても、自分の会社で行う会議とは異なり、そう簡単に思い通りにはいきません。それは納得してもらう相手が、あらゆる業界から集まった幅広い年齢層の人々であり、そこでは業界の特殊性を理由とした表層的な誤魔化しや役職や年齢による暗黙の力関係による説得などは通用しないからです。自分の意思決定が、忌憚のないシビアで幅広い視点にさらされるのです。

あらゆる業界から来た幅広い年齢層の中に身を置き、互いの考えをシビアにぶつけあい、切磋琢磨することにより、自分が行う意思決定も徐々に洗練されてくることを実感します。それは、ただ単に自らの考えを相手に話すのではなく、自分の考えには偏りは無いか?矛盾は無いか?抜け落ちは無いか?と自問自答すると同時に、どのように相手に伝えれば理解してくれるかを毎日繰り返しトレーニングすることにより養われていったものだと思います。

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