遠藤 彩香

研究と経営のチカラをかけ合わせ、中長期研究を成功へつなげたい


遠藤 彩香
2018年東京医科歯科大学大学院卒業。
ライオン株式会社にて研究開発業務に従事した後、2023年、企業派遣としてKBSへ進学。


MBA取得を志したきっかけは?

企業の中長期的な研究活動を生活者や社会への価値に昇華するためには、全社のビジョンと整合性を取りながらも、知財や法務、市場開発、M&Aやファイナンスなどの他部門の業務、ひいては消費者行動の変化や行政の動向まで広く俯瞰して研究戦略を策定する必要があります。しかし、研究しか経験の無い私にはそのような広い視野での戦略構築は難しく、不甲斐なさを感じることも多くありました。そんな折に会社から派遣のお話がありました。最新の学術知見にキャッチアップし続けなければならない研究者としてはキャリアの断絶に不安もありましたが、KBSで経営を専門的に学ぶことで幅広く企業活動を俯瞰した研究戦略策定の能力を獲得したいと考えて進学に踏み切りました。

この1年間で感じるKBSの魅力はどんなところですか?(学び/プライベート)

KBSの魅力はグループ討議を中心とする授業の進め方とケース講義だと思います。学生同士は個々人の意見が違うことが前提意識としてあり、互いに尊重しあう雰囲気が醸成されています。そのような中で様々な意見を交わし合うため、個々人の考えの深い部分までオープンにし合い、自分一人では気づけなかった考え方に触れられます。また、ケースを通じて他社の経営判断事例を実践的にトレースし様々な課題を俯瞰するので、自社での経験にとらわれていた視点が相対化されていきます。そのため、自社の状況や課題が一層明確に捉えられるようになります。このように、日々の授業で発見があり、常に視座・視野・視点の変化を体感しています。授業も座学では無くアウトプットがベースです。授業を重ねるごとに財務、会計、戦略、経済、組織...というあらゆる議論の枠組みが自分の中に形成されていき、自然と多角的に論じられるようになりました。実務は理論通りにはゆかず、ともすれば視座だけが高く机上の空論と揶揄されてしまうMBAですが、KBSでは実際の事例を議題にして、おのおのが自分の職務経験を元に議論を深めていくので地に足のついた経営の考え方が身につくのも本校ならではの利点ではないでしょうか。

KBS入学前とのポジティブなギャップがあれば教えてください。

当社にはKBS出身の社員が多く在籍しています。諸先輩方はKBSで朝から晩まで寝る間を惜しんで勉学に励んでいたと聞いていました。入学前はそんなハードな勉強に、しかも基礎研究部門出身で全くの門外漢の私がついて行けるだろうか?と不安に感じる部分もありました。本校の授業では、同じグループメンバーで何度も深く討議を重ねます。難しい課題も仲間とともに乗り越えていくので、むしろハードであればこそそれが一層楽しく感じられました。社歴も浅く、研究しか経験が無い状態の私は財務諸表すら全くわからないような状態からスタートしましたが、わからないことがあってもすぐに助け合える環境は初学者の私には大変ありがたかったです。

卒業後のキャリアにKBSでの学びはどのように活かされると考えますか?

基盤・技術研究などの中長期研究を大きな成果に繋げるには、まだ非顕在のニーズを喚起したり、法規制などの社会インフラを変えたりして市場を創出していかなければならない局面があります。市場創出までには分野横断的な課題解決が求められますが、一方で研究という活動の性質上、非常に高度な専門性が求められます。専門性の高さと分野横断的課題解決能力の双方を最大限機能が発揮できる状態で組織に維持するのは並大抵のことではありません。そのためには、研究開発の組織の中に経営学の視点で課題解決ができる人が増えていくことが大事だと感じています。卒業後はKBSで得た知識を社内に広げ、中長期研究を通じた市場創出を普遍的に起こせるような研究組織をボトムアップに作っていきたいです。

その他、これだけは伝えたい!ということはありますか?

研究者、生産技術者など一見経営学とは関係ないキャリアの人にこそ、経営学を学んでほしいと感じています。製造業は日本の未来に欠かせない存在だと思っています。良いモノを作る能力が世界の中でも秀でているこのセクターが、企業の個々人にさらなる知識を蓄積し、それを動力にして持続的に成長していけることが、日本の経済成長という明るい未来に繋がるのではないでしょうか。それは単にモノづくりの視点だけで成し遂げられることではありません。そのためにも、研究や技術×経営能力の二つの専門性を持った人財がもっと増えていくことを願っています。

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