2024年11月05日
10月5日、EMBAコースの授業科目「現代アート・ビジネス」最終講義のゲストとして、ゼネコンの株式会社大林組 取締役会長、大林剛郎様にお越しいただきました。
大林会長は1977年本学経済学部のご卒業です。日本屈指の現代アートコレクターとしても知られ、国内外の有名美術館の理事や評議員を務め、日本のアート界を牽引してこられました。
講義で特に印象深かったのは、アートコレクターについての定義です。アートの世界に踏み込んだ原点である「大林組東京本社アートプロジェクト」において、会長は社内スペースを彩る作品を18人の世界的アーティストに依頼されました。その打ち合わせを重ねる過程で、アーティストと対話し、相互に理解を深める刺激を体感されたそうです。今を生きているアーティストとの交流とそこで作品の誕生に立ち会えることこそが、現代アートコレクターの幸福なのだと語られました。また会長しかご存知でないようなアーティストや、コレクションの貴重な裏話の数々にも、受講生は聞き入っていました。
また、現代アートを「見る」には、世界の動向に敏感であると同時に、美術史を学び、アートの流れにおける作品の位置付けを意識することが、自分の視点を築くことにおいて重要だと強調されました。
現代アート・ビジネスの講義は、毎年9月の4週間、土曜の午前・午後の丸一日をかけて行われています。午前の部は写真家である渡部さとる講師によるアートと社会経済の歴史講義、午後の部は現在アート界でご活躍されている方々の講演という2部構成になっています。講義において、美術の知識とともに社会におけるアートの変化を学んだ最後に会長のお話を聞けたことで、受講生の満足度はとても高まりました。
さらに、コレクターとして他人の評価に頼らず、蓄えた知識と自分の見解に基づいて、「良い」を見極めることの重要性についても触れられ、「独自の視点を基に集めたコレクションこそ個性的で価値のあるもの」、またアート作品は「人と同じことをしても評価はされないし、されるべきではない」と力を込められていました。
またアートはその時代・社会を映すものであれば、現代アートがたいへん盛況な欧米と比べて日本の今ひとつの現状は、ビジネスでも新しい価値を生み出すことを評価しない風潮にも通じるのかもしれないと思いました。
「経済は文化のしもべである」――。
コレクターでなくても、私たちもビジネスパーソンとして人文知の造詣を深めることで、世界をより多角的に理解し、変化を起こせるのではないか。非常に考えさせられるご講演でした。
M46(修士2年) 邱奕慈