2025年10月08日
2025年7月3日から29日間までの間、全9日間(計18コマ)にわたり開講された「データ分析入門」を受講しました。猛暑が厳しい中、キャンパスに足を運び講義してくださった村上敏也先生(KBS非常勤講師/金沢工業大学教授)と進拓治先生(KBS非常勤講師/株式会社東京商工リサーチ(以下、「東京商工リサーチ」))に深く御礼申し上げます。
「データ分析入門」の授業は、データ分析の要となる統計学、数理計算、Rソフト活用法といった基礎講義と、ショートケース内のデータを分析して経営上の意思決定を考える実践講義で構成されています。ショートケース内のデータは、東京商工リサーチ様よりご提供いただいた企業情報データベースが活用されており、ビジネスにより近いシチュエーションで分析手法を学ぶことができました。
また、昨今の生成AIの普及や企業におけるAI利活用の流れを受け、本年度からは生成AIを中心とした授業が展開され、RStudioのインストールを始め、統計検定の種類や選択フローチャートの作成、Rスクリプトの作成など、学びの過程における補助ツールとして生成AIを積極的に活用しました。
今回の講義で特に印象に残ったのは、データ分析及び生成AIとの向き合い方です。
ある講義内で、主人公が事業課題に対するデータ分析を行い、その結果を基にした提案を上長に示すものの、採用されないというショートケースを学びました。このケース講義では、そもそも分析するデータの量や質が適切であるか、得られた結果自体が課題を本当に解決するのか、企業が求めていることと提案内容が一致しているのかが論点になりました。また、データ分析が必ずしも企業が抱えている問題をなんでも解決してくれるような万能なツールではなく、分析するデータや手法、そして分析後の結果が目的達成や課題解決として適切かどうかを慎重に検討しなければ、その意味が失われてしまうという点が非常に印象的でした。加えて、データ分析を基にした提案を現場業務に適用するためには、現場で業務を行う人々との連携やコミュニケーションが不可欠であると感じました。
別の講義では、生成AIを活用したRスクリプトの作成や、RStudioを用いたデータ分析を行いました。生成AI活用下でのデータ分析を進める中で、欠損値の処理方針が自動的に決定されてしまったり、生成AIサービスの違いによって生成されるRスクリプトに差異が生じたりするなど、実用化にはまだ多くの課題があることを学びました。同時に、生成AIに指示を与える際のプロンプト設計にも工夫が必要であり、求める答えを得るための言語化能力も求められることを痛感しました。
今後、データ分析業務で生成AIを活用する場面がさらに増え、業務効率化も一層加速すると予想されます。しかし、生成AIが提示した答えを鵜呑みにして行ったデータ分析結果は必ずしも正しいとは限りません。今回の講義を通じて、データ分析の定義や使用目的の明確化、生成AIが導出した答えを疑う姿勢など、データ分析と生成AI活用の本質的な部分を見直す必要性を強く感じました。
今回の講義は、データ分析に関するスキルだけでなく、将来データサイエンスに基づく意思決定業務に携わりたいという意欲にもつながりました。今後も積極的にデータ分析のスキルを身につけてまいります。
改めまして、村上敏也先生、進拓治先生に心より感謝申し上げます。
経営管理研究科M48(修士1年)
上田 陽平
■講師