2025年10月30日
2025年6月25日から27日の3日間、村上裕太郎ゼミはタイ・バンコクにてゼミ合宿を実施しました。本年度は、企業訪問や卒業生との交流会に加え、国際展示会の視察や製造現場の見学など、多彩なプログラムが組まれました。各活動を通じ、国際ビジネスの現場に触れることで多くの学びを得ることができました。

はじめに、バンコク中心部にあるバンコク銀行本店を訪問しました。同銀行はタイを代表する商業銀行の一つで、同行内には日系企業部が設置され、在タイの日系企業に対して金融サービスや各種情報提供を行っています。今回は、日系企業部の藤本理生様にご対応いただき、インタビューを実施しました。
藤本様からは、タイのビジネス文化や経済状況について、日本人の視点を交えた示唆に富むお話を伺いました。お話の中で異文化環境でビジネスを成功させるには、現地の価値観や商習慣への深い理解と、信頼関係の構築が不可欠であることを再認識しました。金融機関の立場から、日本企業が直面する課題に対して橋渡しの役割を果たす重要性や、タイがASEANのハブとして地理的優位性を持ち、日本企業にとって依然として重要な生産拠点である現状についても学ぶことができました。
続いて、ノヴィル・タイランド(Novil (Thailand) Co., Ltd.)を訪問しました。同社は日本のノヴィルホールディングス株式会社のタイ現地法人で、中古車販売を主な事業としています。KBSの卒業生で、同社代表の久岡広季様にご対応いただき、事業内容やタイでの展開についてお話を伺いました。
久岡様からは、タイ市場で新規事業に挑戦するうえでの工夫や実務上のポイントを、経験に基づき具体的にご教示いただきました。現地スタッフとのチームワークや、リース車両の管理といったオペレーションが大変重要であること、そして現地文化・商習慣に合わせて提供価値を柔軟に調整する必要性を学びました。

夜には、バンコクで活躍する慶應義塾出身の塾員の皆様との交流会を開催しました。商社、製造業、スタートアップなど多様な分野の先輩方より、タイ進出の経緯、現地でのご苦労ややりがいについて率直なお話を伺いました。共通して感じられたのは、「チャレンジ精神」と「現地への深いリスペクト」です。異国でゼロから事業を立ち上げ、あるいはマネジメントに携わることの困難と、それを上回る成長機会・達成感、そしてタイの人々の温かさと活気が原動力になっていることが伝わってきました。キャリアを考えるうえで、大きな刺激となりました。
2日目は、東南アジア最大級の美容業界展示会「Cosmoprof CBE ASEAN 2025」を視察しました。世界中から多数の企業が出展し、新製品やサービスが一堂に会する活気に満ちた場でした。私たちは、日本発のヘアケア家電ブランドKINUJOのブースを見学しました。KBS卒業生である浜田智章様が代表を務めるKINUJOは、ヘアアイロンやドライヤーなど高品質な美容家電を展開し、海外市場への進出も加速しています。
ブースでは、トップサロンのスタイリストによる高度なスタイリング実演が来場者の注目を集め、海外バイヤーが日本製品の信頼性と性能に強い関心を示す様子を間近で見ることができました。成長著しいASEANの美容市場で、日本企業がどのように存在感を発揮していくかを体感できる貴重な機会となりました。

最終日は、タイ・ホンダ株式会社の工場を見学しました。同社は本田技研工業のタイにおける二輪車製造・販売の中核拠点として、2021年に統合設立された企業です。
見学では、二輪車の組立ライン、エンジン生産工程、品質検査の様子を拝見しました。最新設備による高い自動化が進む一方で、熟練作業員による丁寧な組立・検査が品質を支えている点が印象的でした。次々と車両が組み上がる生産ラインのスピードと効率性は圧巻で、世界トップクラスの生産現場を間近に体験できました。安全教育にも注力しているとの説明があり、グローバル企業としての社会的責任の在り方についても理解を深めることができました。

3日間を通じて、教室内の学習だけでは得られない実践的な学びを数多く得ました。理論と実務のギャップを現場で確かめ、国際ビジネスにおける文化理解、現地適応の重要性を具体的に理解する機会となりました。本合宿での気づきや刺激を、今後の研究およびキャリア形成に活かしてまいります。
最後になりましたが、本合宿にご協力いただいたバンコク銀行の藤本理生様、ノヴィル・タイランドの久岡広季様、交流会にご参加くださった塾員の皆様、KINUJOブースでご対応くださった皆様、そしてタイ・ホンダ株式会社の皆様に、心より御礼申し上げます。
M47村上裕太郎研究室ゼミ生一同
